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ご家族の方へ

2005年度第4回 家族会報/家族教室開催報告

2005年5月1日(日) 17:00〜18:00 ハートクリニックデイケアセンター
講 師:浅井 逸郎 (ハートクリニック理事長)
テーマ:「薬によらない治療」

大型連休に重なる日程となったにもかかわらず、19名と、多数のご家族の方々にご参加いただくことができました。診察時間の延長のため、やや遅れて会場に入った浅井先生の簡単な挨拶の後、早速、講演が開始されました。講演は、参加された方に予め配付されたレジュメに基づき、スライドを使用して行われました。

薬によらない治療

「こころ」のトラブルについて、治療を受けるというと、普通、どのような治療を思い浮かべるでしょうか?

真っ先に思い浮かべるのは、おそらく「カウンセリング」ではないかと思います。会場で、浅井先生に問いかけられたご家族の方にも、そうお答えになった方がいらっしゃいました。講演ではまず、「カウンセリング」以外の治療方法について、通覧され、その長所・短所について、説明されました(例:グループセラピー、認知行動療法、行動療法、リラクセーション、プレイセラピー、表現療法、森田療法、内観法、精神分析、アニマルセラピー、精神科デイケア)。

やはり、どのような治療法も、一長一短というのが現状のようです。

カウンセリングとは

「カウンセリング」という用語は、普段、割合によく聞かれる用語ではないでしょうか。しかし、その具体的な意味をご存知な方はどれほどいらっしゃるでしょうか?

「カウンセリング」とは、自己洞察を深め、自分の問題点を解決していく手助けをすることです。そして、一口に「カウンセリング」といっても、その種類は様々あるようです(例:ロジャースのカウンセリング、探索的カウンセリング、表出型力動的精神療法、ナラティブセラピー)。そして、それぞれの技法を正しく、効果的に用いるには、治療者は、かなりの専門的知識が必要であり、相当の訓練をしなくてはならないということです。

カウンセリングの作用と副作用

さて、「こころ」のトラブルについて、治療を受けるというとき、多くの方が思い浮かべられる「カウンセリング」ですが、どんなものにも良い面・悪い面があるように、また、お薬にも病気に効果的な作用と副作用があるように、「カウンセリング」にも、作用と副作用があることをご存知でしょうか?

「カウンセリング」の作用としては、患者さまが自分の問題点を知り、問題行動や、問題となる感情を自分の力で変容させることができるようになる、ということがあります。しかしながら、「カウンセリング」ではときに、自分の中の問題に真正面から向き合うことが求められることがあります。そうしたとき、大きな問題に直面することそれ自体が、患者さまの具合を悪くしてしまうことがあります。これが「カウンセリング」の副作用ということができます。

カウンセリングのできない人

「カウンセリング」はまた、誰にでも、どんな「こころ」のトラブルにも適用できるわけではありません。それでは、「カウンセリング」を適用できない方とは、どんな方なのでしょうか?

浅井先生の説明によれば、それは、以下のような方々のようです。ます、生物学的な病気である方。こうした場合には、薬物療法が主な治療法となります。そして、症状の重い方。カウンセリングでは、自分の問題に直面しなくてはいけないので、症状の重い方はその過程に耐えることができません。

また、言語的なコミュニケーションが中心となる「カウンセリング」は、言葉による自己表現があまりできない方には不向きです。更に、これは当たり前といえば当たり前ですが、カウンセリングを受けたくない方。他には、現実の生活の乏しい方やアルコール依存症の方が挙げられました。

カウンセリングの副作用

続いて、講演では、カウンセリングを誤って適用するとどのようなことが起こってしまうか、について、具体的な病気(例:重度のうつ病、統合失調症、自閉症)を例に挙げ、説明されました。

説明では、極端な例が挙げられ、参加された方の中には「本当にそんなことがあるのだろうか?」といった印象を持たれた方もいらっしゃったかもしれません。そして、「カウンセリングの怖さ」といったことを感じられた方もいらっしゃったかもしれません。

カウンセリングの前にすべきこと

さて、では、「カウンセリング」を誤って適用してしまうことを避けるには、何が必要でしょうか?

まず、第一に、身体的検査(血液検査、心電図検査、頭部MRI、脳波検査など)が挙げられます。これは、一見、「こころ」のトラブルが原因と思われる症状の影に、実は身体的な病気が潜んでいる場合がままあることから、行われます。もし、身体的な病気が原因で起こっている症状であるにもかかわらず、検査も行わず「こころ」のトラブルと断定して治療を行えば、適切な治療を施されることなしに、病気の悪化を招いてしまうでしょう。次に、精神医学的診察や各種心理検査が挙げられます。

ここで、「カウンセリング」が効果的な症状であるか、を慎重に検討します。そして、もし「カウンセリング」を適用することが考えられれば、導入面接が行われます。これは、治療者と患者さまの間で、「カウンセリング」の目的や期間、頻度や時間、方法などをはっきりと決めていく面接です。「カウンセリング」は、ただのお悩み相談ではありません。こうした枠組みをはっきりとさせることが、「カウンセリング」には必要不可欠なのです。

薬と薬以外の治療法の併用

多くの「こころ」のトラブルの治療には、薬と、薬以外の治療が併用されています。

薬を飲めば、すっかり治る、というのであれば、これほど楽で簡単なことはありません。しかしながら、現状では、「こころ」のトラブルには、残念ながら、「特効薬」というものがまだありません。そこで、多くの場合、薬の効果を補助する目的で、薬と、薬以外の方法を組み合わせてあたるのが通常の方法となっています。薬の良いところと、薬以外の方法の良いところを組み合わせて使うことによって、治療の効果を高めている、ということですね。

講演では、具体的な病名を挙げて、それぞれの治療に用いられる薬と、薬以外の治療法の紹介がされました。そして、最後に、ハートクリニックでも行われている薬以外の治療法として、「精神科デイケア」について紹介されました。それによれば、「精神科デイケア」は、様々な要素(表現療法、プレイセラピー、カウンセリング、グループセラピー、認知行動療法など)を内包した、総合的な治療方法であるということのようです。そして、まだまだ研究の途上ではあるものの、その治療効果は、様々なところであがっているようです。

まとめにかえて

今回の講演では、「こころ」のトラブルに対する薬以外の治療方法として、「カウンセリング」について、主に紹介されました。ここで強調されたことは、「カウンセリング」はあくまで補助的な治療方法であり、またどのような治療方法も、万能ではない、ということだったのではないでしょうか。

参加された方の中には、「カウンセリング」に副作用が存在することに驚かれた方、その副作用の怖さ、などを感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかしながら、大切なことは、どのような治療方法も、それについての正確な知識を持ち、その効果、副作用を知り、十分な準備をもって用いられることなのではないでしょうか。慎重な判断のもと、十分な訓練を積んだ専門家によって行われるとき、治療は、最大の効果を発揮するのだと思われます。

「こころ」のトラブルには、様々な治療方法が用意されています。それらの良いところを組み合わせて、より高い効果を期待したいですね。

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