こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。
こころの健康アラカルト No.551~560
- No.560 必要以上に叱ってはいませんか
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幼いわが子に悪気はないと分かっていても、何度も繰り返す質問にイライラしていませんか。質問攻めを叱ってはいけないのでしょうか。 子どもは好奇心旺盛なので、さまざまな質問をすることがあります。度を過ぎて付きまとえば、親だってうるさく感じることもあるでしょう。そのとき、理由を伝えて注意するのは、対人との距離を図る勉強でもあります。しかし、必要以上に叱ったり、手を上げるのは感心しません。
毎日のように行うと、子どもにストレスが重なり、過呼吸や腹痛、うつ病などの疾病を発症する恐れがあります。 また、言葉や力の暴力も一種の表現だと身に付き、いずれ親になったときに同じような言動を振るうケースがあります。自身の異常に気づいて抑えようとしても、なかなか難しいため、葛藤が重なって心に不調を起こす場合もあります。親から子への連鎖を止めるためにも、気がかりなときは専門医に相談を。ハートクリニック院長 浅井逸郎 09/08/29
- No.559 パートナーが依存症、その時あなたは
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アルコールや薬物、ギャンブル等にのめり込んでいる人を自分の力で立ち直らせてみせると頑張ってはいませんか? もしパートナーが、生活に支障を来す程、酒や賭け事に依存してしまったらどうしますか? 「大丈夫、私がしっかり立ち直らせてみせる」とお考えでしょうか。 例えばお酒にどっぷり浸っている人に「今日は一合で止めようね」等と、かいがいしく世話を焼いたとしても大抵はうまくいきません。それは、依存症が基本的に自分で制御できないものだからです。そのため、あんなに約束したのにと相手への非難や軽蔑の感情が募り、関係が破綻してしまうという事にもなりかねません。
問題の解決には、本人自身が「こんな状態ではもうダメになる」と実感する事が必要なんです。この「底打ち体験」を経なければ、どんなに周囲が助力しても、ますますこじれるだけです。 大切なのは底打ち体験をなるべく早めてあげる事。周囲の人がまず、専門医の適切な助言を受けられる事をお勧めします。ハートクリニック院長 浅井逸郎 09/08/27
- No.558 ネグレクトで悩んではいませんか
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「ネグレクト(育児放棄)」という言葉を耳にしたことはありませんか。 出産前から「子どもはまだ先でいいわ」「もう一人育てるのは難しいわ」など状況的なことで出産が受け入れられない場合や、出産後ホルモンバランスが崩れるためイライラして子どもに愛着が持てないことがあります。しかし出産が終わる、産じょく期を過ぎることで出産を受け入れられるようになる人が多いようです。 それでも受け入れられずストレスを抱えてしまい頭痛、めまい、落ち込みなどを感じる場合は注意が必要です。また妊娠自体がストレス源となり、うつ病を発症することがありますが、妊娠中の体の変化と思われ心の病気が見逃されてしまうケースもあります。
産じょく期は夜泣きによる睡眠不足や、言葉の通じない子どもと密室で二人きりになるなどお母さんの負担が大きくなるので、休める環境を作ってあげることが大切です。 周囲が非難すると「子育て一つきちんとできない」と自信をなくして心の病気が悪化することがあります。
お母さんはもちろん子どのためにも気になる方は、専門科に相談してはいかがでしょう。ハートクリニック院長 浅井逸郎 09/08/27
- No.557 ペットロスって?
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ペットロスには期間や程度というのはあるのでしょうか。 数カ月~半年と経つうちに寂しさは薄れていきますが、ひどい場合は、喪って数か月を経ても、ペットが歩く足音が聞こえたり、玄関にお迎えをして待っているペットの姿が見えたりします。 立ち直るためには、かけがえのないペットだったとしても「新しいペット」を飼うことが有効な場合が多いです。長年一緒だったペットは家族の一員という思いがあるので、本人としては最初の1、2週間は抵抗があるかもしれませんが、やはり「新しいペット」で治ることが少なくありません。1、2カ月経ったころ、身近な人から新しいペットを飼うように薦めるのがいいでしょう。 「周りに言われて飼い始める」という過程が重要です。言われて飼い始めたら、可愛くなってきたというプロセスですね。本人が自分から飼うのを待っているより、周りから薦める方がいいと思われます。 心の病気を抱えている人の場合は、ペットの存在は特別な意味合いがあり、丁寧な対応を必要とする場合が多いです。薬で改善されなかった点が、ペットで良くなったという場合もあり、喪うことで病状が悪化してしまうことがあるからです。 新たなペットを進めるのも、医療機関のスタッフから話をしてもらう方がいいかもしれません。家族の言葉よりも、第三者の言葉の方が「そうかな」と受け入れてくれる場合があります。早めのご相談を。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 09/08/06
- No.556 冷房で不調を感じてはいませんか
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お盆を過ぎましたが、暑さはまだ続きそうですね。しばらくは、冷房がきいた場所で過ごすことが多いのではないでしょうか。 この季節は暑さだけではなく、冷房によって不調を感じることがあります。冷房が効いた室内に長時間いて疲れたり、冷えを訴えたりする女性も少なくないようです。これは冷えきった室内と室外の暑さによる温度差により自律神経のバランスがくずれることが原因ともいいます。 特に女性は抹消部分での血液の循環とその調節が悪い方が多いため冷房に弱いようです。 家庭でも寝るときにお父さんが蒸し暑いからとエアコンを入れると、お母さんは寒いと冷房を止める、職場では外回りから戻った人と事務職の人でエアコンの温度調節を巡って葛藤がおきたり、どちらかが我慢したりするケースもあるのではないでしょうか。 体によくないと熱帯夜にエアコンを入れず寝付けないため翌日疲れが残ってしまうこともあるので、自分たちに合った最適値を見つけることが必要です。オフィスなど冷房を切ることが難しい場所では、自己防衛をして残り少ない夏を快適に過ごしましょう。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 09/08/27
- No.555 「頼り下手」な人ご用心、「こころ」のこの落とし穴
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非常に苦しい立場になっても、どうしても周囲の人に頼れない。そんなことはありませんか。 「子どもの事は母親の私の責任だから」とか「これは私が任された仕事だから」等、問題を一人で抱え込む人がいます。周りに頼れば楽になるケースでも、頑なに自分一人で解決しようとするのです。 責任感を持って物事に対処しようとする姿勢は立派ですが、一方で、苦しくても周囲の協力を仰げないこんな“頼り下手”な人は、深刻な「こころ」の問題を抱える場合もあるんです。
例えば過剰な仕事を処理しきれなくてうつ病等になってしまう場合や、重圧から逃れるための気晴らしとして、お酒やギャンブル、買物等にのめり込み、深刻な依存症に陥ってしまうケースがそうです。 このような状況を招かないためには、オーバーワークになっていないか、周囲で注意してあげる事が大切。こちらから積極的に話しかけ続け、協力を申し出る事で、気持ちの負担も随分軽くなるんです。ハートクリニック院長 浅井逸郎 09/08/20
- No.554 電車内や授業中にトイレに行きたくなる
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電車・バスの中や教室で授業開始後に度々トイレに行きたくなる場合、空間恐怖を伴うパニック障害の可能性があります。 すぐトイレに行けない場所にいると強い不安を感じ自律神経症状が出る為、トイレに行きたくなるのではないかと不安になったり、トイレのない車両を避けたりするのが特徴です。 10~20代の若い女性にやや多く、小学生の発症例も。自立心の強い頑張り屋さんが多いので、我慢して悪化させ不登校に陥らないよう、周囲が気づいて初期に治療を始められるといいですね。
治療は、血液検査・心電図等で身体疾患でないことを確認後、症状が出ないよう慣らしていく行動療法と薬の二本立てで進めます。 「気の持ちよう」では治りません。医師の指導通り治療すれば大丈夫。繰り返さず若いうちに完治させましょう。ハートクリニック院長 浅井逸郎 09/08/07
- No.553 約束を守らない人にイライラしたら
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いい大人なのに全く約束を守らない。そんな人に振り回されてはいませんか。 待ち合わせに遅れる、期日を守らない・・・日常の小さな約束が守れないで、周囲をイライラさせる人がいます。また、そんな約束破りを絶対に許せないという人もいます。 元々日本は約束に厳しい文化。ですから約束にとてもゆるい海外の文化に触れると、カルチャーショックを感じる程なんです。でも、振り返ってみれば、職場や家庭で、守られない約束の何と多い事か、約束をすっぽかされた事は、プライドが傷ついてよく覚えているものですが、すっぽかした事は案外忘れがち。あまり窮屈に考え過ぎない方が、円滑な人間関係にはよいのかもしれません。
ただ、そうは言っても約束を破り続けて平気という人は困り者。実は約束が守れない背景には、うつ病や統合失調症といった「こころ」の病気が潜む場合もあるんです。 周囲の人も「ちょっと普通じゃない」と感じたら早目にご相談下さいね。ハートクリニック院長 浅井逸郎 09/08/06
- No.552 物事を決められなくなていませんか
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自分のことなのに判断や決断ができないということはありませんか。 例えば家を購入する時や病気になった時の治療方法などを家族に判断を仰ぐ、子供が普段手にしたことのない1万円で買い物する時には親に頼るといったことがあるでしょう。このように自信が無くて相手の意見を求めたり頼ったりすることはよくあるかもしれません。 しかし、買物に行ったのに何を買ったら良いか判断がつかないなど、日常のささいなことが決められない場合は心の病気が関係しているかもしれません。
全般性不安障害や強迫性障害では不安が大きく、うつ病では自信がない、思考の速度が遅いなどが原因で判断ができないことがあります。主要な判断を他者に依存しゆだねることで心的安定を求める依存性パーソナリティ障害のケースもあります。
認知症では記憶があいまいになり、判断能力が低下し、付き添いの家族を見上げ頼りたい気持ちを表すことがあるそうです。 自分で判断をつけたくてもできない原因がある場合は、周りが一律に優柔不断だ、自分で決めなさいとしかりつけるのはよくありません。 気になる方は専門科に相談してみてはいかがでしょう。ハートクリニック院長 浅井逸郎 09/08/06
- No.551 増えるメールでのイジメ
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今は小学生の子どもでも、パソコンや携帯電話を使いますよね。それに伴い、メールやブログによるイジメが増えているのではないでしょうか。 あるリーダー的な存在の子がイジメのターゲットを決め、一斉メールやブログで、「明日から誰々と口をきかないように」といったやり取りが実際にあるようです。 ブログや日記などでも誹謗(ひぼう)・中傷の書き込みがあるようで、それを見た本人はとてもショックを受けます。“活字”として表現されると、真実味が帯び、事実だと思ってしまうのです。もし、自分のことを書き込まれたら、頑張って友だちや家族に話しましょう。 周囲の対応方法といえば、普段、接している友達や家族がしっかり支えてあげましょう。特に大人は、書かれた内容がバーチャルであるという意識を持ち、左右されないことが大切です。
イジメに合っている子どものサインとは、子どもは自分がイジメられているとはなかなか口にはできません。自分でなんとかしようとします。イジメは先生がいない時間に起こりやすいので、遅刻をする、帰宅が速いなどは、子どもからのサインかもしれません。 親は、自立を促すのも大切ですが、“弱みを見せてもいい”という関係作りを普段から心がけておくといいでしょう。 子どもに過呼吸や動悸、めまい、腹痛などの症状がある場合は、不安障害などの心の病の可能性もあるので、早めに心療内科に相談を。ハートクリニック院長 浅井逸郎 09/08/01