こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。
こころの健康アラカルト No.751~760
- No.760 震災後、不安な毎日です
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震災後、地震に対して異常なくらいに敏感で不安な毎日です。心のバランスが乱れているように思うのですが、相談した方がよろしいでしょうか? こんな質問がありました。 このような場合、相談することで症状が改善するケースが多く見られます。 例えば、実際には揺れていないのに揺れているような感覚になる「浮動性目まい」は、薬の処方でほとんどが改善されます。
過度に不安な状態になる「急性ストレス障害」は、一般的に4週間以内に治まるといわれています。東日本大震災から2カ月余り経ちますが、未だに些細な物音にも驚く、悪夢をみるなどの強い不安に悩まされているようであれば、症状の慢性化を疑うべきです。 また、「全般性不安障害」や「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」の可能性も考えられます。
前者は、仕事・学業・家庭生活・健康など、いろいろな出来事や活動に対して過剰な不安と心配をもつようになる病気。後者は、地震等の極限状態で未曾有の体験をし、心におきる異変のことです。時間を置いてフラッシュバックが起き、それに伴って悪夢・不眠・不安・抑うつ状態が現れる状態のことを言います。
どの病気もそうですが、放置は禁物。ですので、早めに専門医に相談するなどして、過剰な不安を大幅に減少させ、症状の慢性化を防ぐことが大切です。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/05/24
- No.759 その”不安”、原因はありますか?
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ストレスを抱えて生きる現代人に多いといわれる「不安障害」について3回に分けてお話しします。
不安障害は症状によって細分化されますが、原因がないのに不安が募る、いろいろなことが心配になる、といった症状が現れはじめたら“全般性不安障害”の可能性があります。 初期の特徴的な症状は、頭痛、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などの自律神経系の症状です。子どもの帰宅がいつもよりちょっと遅いだけで落ち着かない、救急車の音を聞くとうちの子では・・・と不安になり家事が手に付かなくなる、といった極端な不安感も現れます。男性に比べて女性のほうが発症しやすい傾向にあり、中でも20代前後の若い女性に多いといわれています。 進行すると次第に疲労感、倦怠感が出てきます。両親や夫など信頼できる人が一緒でないと外出できなくなることもあります。
注意することは、症状が現れても、単なる心配性、いつもよりドキドキしているだけ、と特に気にせずそのままにしていることも。また、更年期障害と誤解している人も多いようです。初期症状に少しでも思い当たる項目があるなら、まずは専門医に相談をハートクリニック院長 浅井逸郎 11/05/14
- No.758 5月病でやる気が起きません
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連休が終わり、何をするにもまったくやる気が起きません。この「5月病」は心の病気なのでしょうか。
いわゆる「5月病」は、医学用語ではありません。例えば希望の大学に入ったが、理想と現実のギャップにショックを受け、やる気がなくなる、意義を見出せなくなるなどの状態のことを一般的に表します。 仕事でも同じで、就職したものの最初は雑務ばかりで、やる気がなくなるというケースもあります。
また、目標だった大学や企業に入ることで、燃え尽きてしまう場合も同様の状態が見られます。 その喪失感、やる気のなさがひどい場合は、軽い「よくうつ」状態や「小うつ病」また「適応障害」をきたす人もいます。 これらの「心の病気」になりやすいタイプとして、孤立している人が挙げらます。ですので、大学であれ会社であれ、先輩や同期などとしっかりコミュニケーションをとり、将来のビジョンを持ったり、また状況を分かち合うことで、予防につながります。
「小うつ病」などは、自分ではわかりにくいもの。ひどい肩こり、食欲減退などの身体的症状や、学校や会社を遅刻・休みがちになったら危険信号です。また、家族のサポートがとても重要で、生活習慣などを見て乱れているようであれば、専門医に相談することをお勧めします。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/05/14
- No.757 震災から体調が悪い
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東日本大震災からもうすぐ2カ月。被災地以外の地域でも、津波等の映像を何度も見て体調を崩した方が多くおられました。主な症状は涙が出る、息苦しい、動悸、めまい、頭痛、悪夢などです。
地震直後よりも、リアルな被害状況が報道され続けた頃に来院される方が急増しました。悲惨さ・絶望感を強調する映像の影響力は絶大で、急性ストレス反応を起こします。繰り返し見ると自分も被災したかのような辛さを感じて心が悲鳴を上げます。そういう時はニュース番組を見るのをやめましょう。
不安傾向が強い方が発症しやすいようです。9割は自然に治りますが、約1割の方は1カ月たっても症状が続くので治療が必要です。家事や日常生活に支障をきたさないよう、早めの受診で悪化させないことが大切です。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/05/06
- No.756 気もちの浮き沈みが激しい友達、どう接したらよい
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「気持ちの浮き沈みが激しい友達がいます。沈んでいる時には連絡もとれません。どのように接したらよいのですか。」こんな質問が。 親友、またはクラスメイト、知り合いなど、その人との関係性によって一概には言えませんが、こころの病気という前提で考えるならば、そっとしておく・・・のが一番よい対応方法です。要するに刺激を与えないことが、心の病気を患っている人に対しては親切なのです。これは、友人に限らず、子どもに対しても基本的には同じと言えます。 例えば「うつ病」の場合、平常な状態とうつ状態を繰り返します。また、「そううつ病」では、そう状態とうつ状態を繰り返します。
これら2つの病気は、別々の病気なので、治療法は異なりますが、接し方は同じで、基本的には先にも述べたようにそっとしておくことです。 しかし、症状の軽重によっては、しっかり状況を確認した上で、例えば友人の実家に連絡したり、専門医に相談することも必要になります。日頃から、心の浮き沈みや「動」「静」の様子を確認することで対応の仕方が分かります。 落ち込みがひどい、そう状態、強い恐怖を感じているなど、友人の様子がこれまでと大きく異なる場合は、黄色信号、専門医への相談が望まれます。どんな病気もそうですが、早期の治療が大切です。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/04/30
- No.755 かわいいとは思えない・・・
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出産後の女性に見られる「産後うつ」についてお話ししましょう。 「出産後にわけもなく涙が出て不安になる」「子どもがかわいく思えない」などの症状が現れたら「産後うつ」かもしれません。 産後5~6か月間は、女性ホルモンのバランスが不安定になり、自律神経症状や幻覚などが出やすい期間と言われています。特に、出産前に何らかの「心の病」を患っていた人や、家事に育児にと孤立無援でがんばり過ぎている人に発症しやすい傾向があります。
まずは心理的負担を軽減するために、両親や家族の援助、託児・保育などのサービスを利用するなど環境を見直しましょう。それでも症状の改善が見られないなどの場合は、専門医に相談してください。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/04/23
- No.754 休日も仕事が気になってリラックスできません
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「休日も仕事が気になってリラックスできません。日曜日の夜は、とても重い気持ちになります。休日に気分を切り替えるにはどうすればよいのでしょうか?」こんな質問がありました。 職場の環境や抱えている仕事の内容など背景によって一概には言えませんが、負担感を強く感じるということは、心が弱っていると言えます。 気分の切り替え方よりも、まずはご自身の症状を確認すべきです。ご質問のような場合、軽い「うつ病」が疑われます。気分の落ち込み、またやる気喪失の状態が長く続く病気です。
その他にも考えうるものとして、環境によりストレスを過大に感じてしまう「適応障害」や「社交性不安障害」「パニック障害」「統合失調症」が挙げられます。 「社交性不安障害」と「パニック障害」は、いわゆる不安障害の一種です。前者は、人前で話をしたり、グループで活動することに対して、強い不安感・恐怖感を持ちます。後者は、突然に激しい不安に見舞われ、動悸息切れ、目まいなどの発作に襲われるものです。「統合失調症」は不安や幻覚、被害妄想などに見舞われ、人とトラブルを起こすケースもあります。 これらの心の病は、疲れが取れない、頭痛や下痢、肩こりなどの身体の症状を伴います。
このような症状があれば黄色信号。進行する前に専門医で診てもらうことをお勧めします 。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/04/23
- No.753 揺れているのは自分だけ・・・?
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地震以来、体の揺れによる「めまい」を訴える患者さんが増えています。しかしたいていの場合は、船酔いと同じで時間と共に軽減していくものです。 「めまい」にはさまざまな種類があり、三半規管の障害による「頭位変換性めまい」や、聴力の低下を伴う「回転性めまい(メニエール)」のほかに、心的要因による浮動性目まい」があります。 浮動性めまいの症状とは、「ふわふわ・くらくら」して揺れているような心地になります。また、頭痛や肩こり、動悸(どうき)、疲労感、睡眠障害などの付随的症状を伴うこともあります。 どのような人がかかりやすいかというと、「自律神経障害」「不安障害」「うつ病」など、心の病を患っている人に比較的多く見られます。
治療方法はといえば、まずは、投薬やカウンセリングで根本にある心的要因を取り除いていきます。軽度であれば、多くは回復する傾向にあるので早期治療が大切です。放っておくと、悪化することもあるので注意してください。継続的な「めまい」の裏には心の病が潜んでいることも。気になる症状は自分で判断せずに、専門医に相談してください 。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/04/16
- No.752 不眠症で困っています
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「不眠症で困っています。何か解決策はありますか?」 スムーズに眠りにつくためには、まず、就寝時間にこだわりすぎないこと。なかなか寝付けない時は、いったん床を離れてリラックスし、眠くなってからも一度床に就くようにしてみましょう。 そして、就寝時間にかかわらず同じ時刻に起床することを心がけます。
また、就寝前は刺激物の摂取避けて下さい。例えば、就床前4時間のカフェイン摂取、1時間の喫煙は厳禁。規則正しい3度の食事、規則正しい運動習慣も良い睡眠に役立ちます。 「不眠」に悩む方には、眠りが浅い、朝早く目が覚める、なかなか寝付けない、悪夢を見る、歯ぎしり、叫ぶなどの症状が見られます。
これらの症状がひどい場合は、専門医への相談をお勧めします。不眠症は、一般的なものと思われがちですが、純粋な「不眠症」の方はごくわずか、多くが「うつ病」「躁鬱病」「社会不安障害」「パニック障害」「統合失調症」などの心の病気によるものなのです。
また、医師の処方なく睡眠導入剤などで良眠を得ようとするケースがありますが、それは危険です。背景を放置するため、病状を進行させてしまう可能性が高いからです。 まずは何が背景にあるのか、専門医に相談して知るべきです。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/04/16
- No.751 拒食と過食の繰り返し
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「付き合っていた人にふられ、ひどく落ち込んでいます。拒食と過食の繰り返し。相談した方がよろしいでしょうか。」こんな質問がありました。 「摂食障害」だと考えられます。早期に専門医に相談することをお勧めします。この病気は、一般的に「拒食症」と言われているもので、先に拒食となり極端な低体重が続き、その後に過食となるケースが見られます。患者の中には、拒食がひどく身長160cmで体重が30kgを下回るケースもありました。その一方で、体型は標準的な方も少なくありません。 病因は、身体的・心理的な要因から、「痩せる=美」とする今日の風潮による文化的なものまで、様々な要因が指摘されています。
この「摂食障害」には色々なパターンがあり、過食でも「排出型」だと、たくさん食べては口に指を入れておう吐したり、下剤を多量に服用して排泄したりする症状も見られます。 難治な病気とされており、通常は、「薬物療法」を試みますが、この療法だと患者全体の3分の1しか治らないデータがあります。そのため、「カウンセリング」や皆で話し合う「自助グループ」を利用するなどして、長い年月をかけて治していきます。 また、「うつ病」などをあわせて発症する場合もありますので、早期の相談が大切です。早期であれば治る可能性も高くなるようです。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/04/09