こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。
こころの健康アラカルト No.1091~1100
- No.1100 食べることを止められない
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「イライラすると、つい甘いものを口にしてしまい、なかなか止めることができません。このままでは過食症になってしまうのでは、と心配です。」28歳・女性からの相談です。 「仕事中などストレスを感じると、ついお菓子など甘いものを口にしてしまう」というご相談者。事務職で一日中パソコンの前に座っており、普段は運動する機会もないため、学生時代に比べて10キロ以上も体重が増加しているそうです。
これまで何度かダイエットに挑戦し、その時は体重も減りますが、かえって食欲が増してリバウンドすることを繰り返していると言います。 イライラした時に甘いものを口にすると、血糖値が上がって一時的に緩和されます。しかしこれが続くとささいなきっかけで甘いものが欲しくなり、どんどんと量や機会が増えて、「甘味依存」の状態になります。 心配しているような過食症とは違いますが、過度な体重の増加にはやはり注意が必要です。 ダイエットの方法を見直すことなどもそうですが、イライラの根源となっている要因を減らすことが大切です。心療内科やカウンセリングなど専門家に相談すると、ストレスへの対処がうまくできるようになるかもしれません。もし原因がうつ病や不安障害など心の病気の場合でも、早めに医療的な関わりができると思います。ハートクリニック院長 浅井逸郎 14/11/08
- No.1099 高齢の親が住む実家が物であふれる
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「高齢の親が住む実家が、以前は片付いていたのに最近物であふれて散らかってきた」という声を聞くことがあります。高齢者と片付けについてお話ししましょう。 高齢者になると片付けられなくことはよくあります。一つは加齢による変化が考えられます。物忘れの頻度が増し物をしまうのを忘れていたり、体力の衰えにより労力がかけられない場合もあります。高いところに手が届かない、階段の上り下りが困難など生活空間が狭くなると、その分物があふれることになります。もう一つは世代間の違いです。戦時中など物がない時代を経てきた世代にとって、なかなか物が捨てられないという人も多いです。
心配なのは、どこに何があるか分からなくなる、通路や寝具の上にも物があふれる、ごみがゴミ箱に入っていない、冷蔵庫の中に腐ったものがそのまま入っていて異臭を放っている、浴室ににごったお湯が入れっぱなしなどの状態が見られると注意が必要です。 原因として考えられるのは、認知症や老年期のうつ病などの可能性もあります。まずは早めに相談してください。ハートクリニック院長 浅井逸郎 14/11/08
- No.1098 薬を飲むのはイヤという方へ
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患者さん、特に女性の方では、服薬に抵抗を感じることがしばしばあります。妊娠中の胎児への影響を心配したり、生理痛で鎮痛剤を飲んでいた経験があって、薬は飲まないで済めばその方が良いと思い込んでいるのです。
加えてテレビ番組では薬物依存症が取り上げられ、不安が募りがちです。安全が確認された薬しか処方されませんから、マスコミ報道は誇張されていると思いますが、不安でしたらおっしゃって下さい。お薬を飲むのがイヤだからと言って、患者様をしかったりはしません(笑)。 ストレス・不安が強いときや眠れないとき、なかなか改善しなければお薬を使った方が早くよくなったり悪化を防ぐこともあります。しかし薬だけが治療法ではありません。どんな治療をしていくか、話し合っていきましょう。ハートクリニック院長 浅井逸郎 14/11/07
- No.1097 「虐待」の背景に心の病がある場合もる
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児童虐待と心の病についてお話ししましょう。 虐待にはどのようなものがあるのでしょうか。過剰にたたいたり蹴ったりなど身体的な暴力、人格的なことを否定し続ける言葉の暴力があります。また、無視したり食事を十分与えない、入浴させない、着替えをさせないなどのネグレクトもよくみられます。父親から娘に対する性的暴力や、母親から息子に対する性的誘惑なども虐待になります。 注意したい子どもの様子はというと、身体にあざがある、基準値をかなり下回って生育が遅れている、なんとなく汚れている、虫歯が多い、怯えた様子がみられるなどが挙げられます。また、心の病を持つ患者さんがお子さんを連れて受診された時に、お子さんにお母さんが優しいかどうか聞くことがあります。低学年くらいまでは概ね「優しい」と答えますが、そうでないときには何か問題がないか、さらに状況を聞きます。
保護者が心の病の場合も考えられるのかというと、非常に多いと言えます。例えばうつ病や双極性障害、統合失調症の方の中には、子どもに暴力的になったり、養育ができなくなってくる場合があります。まずは早めに相談してください。ハートクリニック院長 浅井逸郎 14/11/01
- No.1096 授業や勉強に集中できない娘
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「中学1年の娘が『突然頭がぼーっとして夢の中にいるような感覚になる』と言い出しました。何か心の問題や病気が原因でしょうか。」40歳・女性からの相談です。 目の前の出来事が現実だと思えなくなったり、自分が自分でないような感覚に陥ることを「離人現象」と呼び、うつ病をはじめ不安障害や双極性障害、パーソナリティ障害、適応障害、発達障害など様々な心の病気を原因として現れます。
結論から言うと、ご相談者が心配するように、お嬢さんもこうした心の問題を抱えている可能性が高いと思います。 お嬢さんが「夢の中にいるような感覚j」になるのは、決まって授業中や勉強している時で、テレビを見たり、好きなことをしている時はならないそうです。このことから、勉強そのものの心理的負担が大きくなっていたり、理解できない分野があり、それを過度に捉えることをきっかけに起きていると推測されます。 「頭がぼーっとしている間は気分が悪くむかむかする」と言い、自律神経症状が確認できることからも、心の問題が背景にある可能性が高いと思います。進行性の病気かもしれませんので「一時的なものでは」と考えずになるべく早く専門家にご相談下さい。
原因を確認、追及して適切に対処すれば症状は軽く、治療期間も短く済むと思います。ハートクリニック院長 浅井逸郎 14/11/01
- No.1095 近親者を自殺でなくしたら
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大切な人を自殺で亡くした遺族の心のケアについてお話ししましょう。 遺族の心の状態はどうでしょうか? 自殺は周囲、特に近親者への影響も非常に大きな出来事です。通常は自殺をくいとめるべき“ゲートキーパー”としての役割を果たせなかったため「もう少し早く気づいていたら」「あの一言が追い詰めたのでは」などという気持ちに取らわれてしまうことがあります。 四十九日を過ぎても、人に会うのを避けたり、痩せていくなどの様子が見られたら注意が必要です。うつ病のほか、特に女性は不安障害などで不安感が強くなることも。気になったら早めのケアが大切です。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 14/10/25
- No.1094 気前が良すぎる夫に悩み
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「夫は飲みに行くたびに同僚や後輩の分をおごってしまい、月の出費がばかになりません。家計への負担が大きくやめてほしいと言っていますが、なかなか改善されません。」35歳・女性からの相談です。
ご相談者のご主人(40歳)は、自動車メーカーに勤務。週に1回は同僚と飲みに行くそうですが、そのたびに飲み代を出してしまうため、月の出費が数万円~10万円以上になるそうです。ご主人は管理職と言う立場もあり「コミュニケーションを深めて仕事を円滑に進めるには必要な経費」と言って譲らないそうです。 高度経済成長期には管理職が使える交際費などがありましたが、今はほとんどの企業で認められていません。飲みに行くたびに自腹を切って家計に影響が出ているようなら、やはり問題と言えるでしょう。 まずは二人で家計簿を突き合わせながらじっくり話し合い、適正な支出について考えてみて下さい。多くの男性は家計の支出を甘く見積もってしまう傾向があります。それが奥様との認識のズレを引き起こしている可能性もあります。
それでも限度を超えた支出がある場合は、双極性障害のそう状態をなり、気分が大きくなっていたり、他の心理的要因で抑制が効かなくなっているのかもしれません。イライラしたり、怒りっぽくなっているなどの状態もあるようなら、早めに専門家にご相談下さい。ハートクリニック院長 浅井逸郎 14/10/25
- No.1093 片付けることが苦手です
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「「片付けが苦手で普段の生活や仕事に支障が出ていますが、『片付けなくては』と思えば思うほど行動できません。」20歳・女性からの相談です。 幼い頃から片付けが苦手で、親にも叱られていたというご相談者。現在は一人暮らしをしており、部屋では脱いだ服や使った食器がそのまま、ということも多いそうです。職場でもデスクが乱雑になり、仕事の効率が下がっているため何とか改善したいとおっしゃいます。
男女を問わず片付けが苦手な方は多くて、背景には様々な要因があります。例えばADHD(注意欠陥障害)の不注意優勢型というカテゴリーの方は、注意や関心がすぐにそれてしまうことが特徴です。そのため片付けを始めても開けたタンスの中身が気になって別のことを始めてしまったり、買い物から帰ると商品の入っていた箱や袋がそのままになり、家が乱雑になってしまいます。 ただ、ご相談者の場合はこうした障害と言うより、「片付けなくてはいけない」という思いが強くなりすぎて、心理的に負担となっている可能性が高いと思います。その原因としてうつ病や双極性障害、統合失調症などにより気力が低下していたり、不安障害の慢性化も考えられます。
片付けだけでなく仕事に行くのが辛いなどの症状があったら、診療内科や精神科などでご相談下さい。ハートクリニック院長 浅井逸郎 14/10/18
- No.1092 受験を控えた子どもとの接し方
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「中学受験を控えた娘の勉強量が減っています。どのように声をかけたら良いでしょうか」40歳・女性からの相談です。 ご相談者の娘さんは、自ら「中学受験したい」と言ってきたため、昨年から塾に通い始めました。これまでは成績も志望校のレベルを満たして順調でしたが、最近、テストの成績が悪かったことをきっかけに意欲が薄れ、勉強に身が入らなくなったそうです。ご相談者は「結果はともかく、一度決めたことを投げ出すことはさせたくない」と思い、きつい言葉で勉強するように言うことも多く、そのため親子関係も険悪になっているそうです。
これまで高かった意欲が失われる背景には様々な要因が考えられます。まずは娘さんがなぜ中学受験をしたいと考えたのか、よく話し合って下さい。実は仲の良い友人と同じ中学に行くことを目指していたのに、友人との関係が思わしくなくなったのかもしれません。 従来とは別の「やりたいこと」が出てきた可能性もあります。新しい希望や目標を達成する手段として受験が合理的なら勉強を続けた方が良いと思いますが、そうでないなら受験にこだわる必要はないと思います。
こうした背景がないのに、学校に行けない、食欲がないなど全般的に意欲が低下している場合は、過労や燃え尽き症候群、軽度のうつ病の可能性もあります。専門家にご相談下さい。ハートクリニック院長 浅井逸郎 14/10/11
- No.1091 思春期に多い「醜形恐怖症」とは?
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思春期に多いといわれる「醜形恐怖症」についてお話ししましょう。 醜形恐怖症とは、顔や体の特定部分が必要以上に醜いと感じる精神疾患です。よくあるのは人中(鼻と口との間にある縦の溝)です。実際はほとんどの人が少し左右均等ではない部分なのですが、多くの人が気にしない程度のものが異常に気になります。
日常生活に支障はあるのでしょうか。 自分が醜いから見られているのではないかと思い込んで、人前に出るのを避けるようになります。特に長時間同じ場所にいて、みんなでグループワークなどをしているときに、「注目を浴びている」「みんなに不快感を与えているのでは」という考えにとらわれて苦しくなり、その場にいられなくなるというケースもあります。ひどくなると、外出ができなくなる人も少なくありません。そのほか、テープなどを使って自分で矯正を試みる場合も見られます。
治療法は、薬物療法、認知行動療法、行動療法、カウンセリングなどを行います。妄想的なものや不安が背景になっている神経症など病気の種類や程度、治療時期によって対応の仕方が異なります。まずは家族が気付いて、早めに相談をしてください。ハートクリニック院長 浅井逸郎 14/10/10