こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。

   
福祉用語の基礎知識 理念/考え方

No.27 ライフイベント

人生上の様々な出来事のことを、「ライフイベント」と言います。
どのようなライフイベントを、どの時機に(年齢で)、またどのような順序で経験したかによって、その人のライフコース(人が一生涯にわたってたどる道筋のこと)が形作られていきます。その時代と文化によって規範化している通例的出来事(教育の開始、進学、就職、結婚、職業からの引退など)と、必ずしも予期し得ない、偶発的・非通例的な出来事(戦争、災害、失業、病気・事故など)に分けて捉えられています。 ライフイベント自体、環境が大きく変わるという点で、個人によっては大きなストレス要因となる可能性があります。また、その経験に伴う困難が、ストレスとの関連で論じられることもあります。

No.26 QOL(quality of life/クオリティ・オブ・ライフ)

クオリティ・オブ・ライフ(以後QOL)は、「生活の質」「生命の質」「生存の質」などと訳されています。この言葉は、さまざまな領域で使用されており、その概念は各分野で微妙に異なっているが、一般的には人々の生活を物質的側面から量的にとらえるのではなく、非物質的側面も含め質的にとらえるものであり、高度経済成長等によりある程度の生活水準が確保された結果、質的側面が問われるようになったのかもしれません。 QOLとは、生活者の満足感・幸福感・安心感や生活の快適性・豊かさ等を規定しているものであります。
QOLの構成要素は、大きく2つに分けて考えられます。1つは、生活者自身がどのように感じどのように考えるかという意識的(主観的)な側面であり、もう1つは、生活者を取り巻く環境的な(客観的)側面であります。 1995年のWHOによるQOLについての調査では、QOLを「個人が生活する文化や価値観のなかで、目的や期待、基準及び関心に関わる、自分自身の人生の状況についての認識である」と定義され、QOLを構成する領域を6つ(身体的側面・心理的側面・自立にレベル・社会的関係・生活環境・精神面・宗教・信念)に分けています。 QOLの概念は、医療・福祉・リハビリテーション等の領域で取り上げられています。

No.25 イネイブラー

ある人間関係において、他者が示す望ましくない行動や状態を終結させようとする努力が、その意図とは逆にあるいは無自覚な意図として、結果的にその他者に不都合や問題とされる行動や状態を継続させてしまうことがあります。この逆説的な人間関係パターンを演じる立場にあるもののことをイネイブラーと言います。
付けで飲み歩くアルコール依存症の夫の借金を肩代わりして一生懸命に勘定払いをして歩く妻など、その肩代わりあるいは世話焼き行為の動機となっている意図とは別に、結局同じ行為や状態を継続させ可能とさせてしまうのであります。つまり、依存症の分野では、望ましくない状態を継続する意味で用いていますが、もう一方で、クライエントの潜在的能力を引き出す援助者の役割を意味する言葉としても長く用いられています。どちらの場合も、潜在的可能性を引きし継続することを意味しています。

No.24 コーピング

コーピング(対処)とは、さまざまな状況の際に引き起こされる高いストレス情動的な反応を減らす方法や工夫を意味します。
個人のストレスの受け取り方をラザラスは、「認知的評価」といい、その対処行動の評価には生活歴、価値観、性格的傾向、行動パターンやスキル、ストレスへの情報が関係しています。 最近の研究によるとコーピングには2つあり、人と環境の交互作用を変化させて問題解決していこうとする思考と行動を問題焦点型コーピング、苦痛な情動を調整し克服していこうとする思考と行動を、情動型コーピングといいます。後者は、対処技術(コーピングスキル)を向上させていくことを焦点としています。
コーピングは地道で長いスパンの経験のなかで形成されます。今日、個人の資質や能力などは絶えず変化していくと認めた上で、機能改善に向け、認知と行動に働きかけ援助していくことが強調され、治癒(キュア)ではなくコーピングに力点を置くリハビリテーションの考え方の重要性が指摘されています。

No.23 キーパーソン

2キーパーソンとは「問題の鍵を握っている人」もしくは、「鍵を握る中心人物」のことを言います。
問題の解決にあたり、家族や友人などのインフォーマルなどがキーパーソンになることもあります。キーパーソンの役割をとる人は、対象者と関係がとれ、信頼関係が樹立出来ていること、もしくは状況を把握し、的確な判断や助言、行動が取れることが重要であります。
ソーシャルワークサービスを提供するにあたり、他職種、もしくはボランティア、地域住民、など幅広い方々が関与するなか、さまざまなサービス調整会議やケースカンファレンスが開かれることが多くなっています。そのなかで利用者中心にサービスの提供が行われているか検討するにあたって、最も信頼関係が築かれている人物がキーパーソンとなって会議を運営したり、チームを導いていくことが重要となっています。

No.22 認知

外界から取り外された情報の変換、意味づけ、判断や推理、決定、記憶、言語の使用すべてに関わる情報処理過程および機能を認知と言います。
心理学では、認知は知覚の研究から発展した概念であるが、1960年代以降は行動の一側面を示すだけだはなく、一つの研究領域をも示す包括的な用語として使われています。認知心理学では、これらの情報処理過程の解明に重点が置かれています。
最近ではメタ認知に関する研究や神経生理学および神経心理学領域の成果を受けた研究の流れを汲むものではないが、臨床分野でも認知療法や認知行動療法など、認知領域に焦点を当てる立場という意味で、認知という用語が使用される場合もあります。

No.21 知る権利

国民が、主権者としての立場において、国民の統治などに関する情報を入手する権利(入手を国家により妨害されない権利)のことであり、マスコミの報道の自由は、マスコミ自身の表現の自由とは別に、この国民の知る権利に奉仕する役割がある点で重要な権利とされます。
国が秘密にしている情報をマスコミが暴露した場合に、その情報が国民にとって重要であり本来公表されるべきものであれば、その暴露は国民の知る権利に資するものとして適法とされます。政治家のスキャンダルなども政治家個人のプライバシーとして保護しなければならない反面、公的立場から知る権利が優先する場合が認められています。

No.20 社会資源

利用者がニーズを充足し、問題解決するために活用される各種の制度・施設・機関・設備・資金・物質・法律・情報・集団・個人の有する知識や技術等の総称です。 社会資源を活用するにあたってはクライエントのニーズを明確にし、「自己決定」の原則に基づいて、協働して主体的に利用できるよう支援していくことが基本であります。
社会資源に関する資料、情報を早期に把握し、整備するとともに、資源相互間の調整を図り、社会や他機関・団体に働きかけ、さらに改善・開発・創造していくことが重要な課題となります。ソーシャルワーカー自身も社会資源であり、利用者の生活の質を高め広げる社会資源の提供をしていきます。

No.19 自己実現

自己実現は、哲学、思想領域を含め、多様な意味において用いられる概念であるが、現代の社会福祉において正当とされる価値の一つです。自己実現とは、自己のもつ能力や機能を用いて自らの生き方や生活課題に対する価値を追求し、または実現しようとする事です。 自己実現の概念を端的の打ち出したその中心人物であるマズローおよびロジャーズは、それぞれ独自の観点から自己実現の概念を確立しています。
マズローによれば、自己実現の欲求はかくありたいという可能性の実現による自己充足の欲望であり、生理的欲求、安全の欲求、所属と愛情の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求にいたる5段階の欲求階段の内、下位の欲求が満たされると順次に高い欲求満足に向かうとしまいした。そして最高位の欲求を満たしている人を「自己実現した人」と呼び、人間の精神的健康の重要な指標としました。
ロジャーズの立場は現象論的自己論ともいわれ、その人が自己ならびに外界をどのようにみているかが、その人の行動を決定すると考えています。ロジャーズによれば、現在のありのままの自分の姿と、かくありたいと望んでいる理想像が区別され、一般には、現実自己と理想自己は一致する方向に向かいます。
ソーシャルワーク実践においては、クライエントのありのままの姿を尊重し、また、変化し発達する存在として自己実現を追求する活動を尊重すると同時に、そのために各種の援助方法が用いられます。自己実現があまりにも抑圧されている場合には、環境の改革、変化が要求される場合があり、一方、あまりにも自己実現志向が極端で、環境から遊離したものである場合には、その主体の環境との適合性や順応性について助言しなければなりません。自己実現のプロセスは、個々人の年齢や生活スタイル、信条、価値観等によって異なるが、その個人が十分な自己充足感をもち、長い経過のなかで、その環境への順応や適応が同時に自己実現の歩みになっていることが重要であります。

No.18 生活保護の基本原理

生活保護法に示された生活保護制度の理念ないし基本的な考え方となる4つの原理のことです。生活保護法全体に関わり、その解釈と運用の全般的な指針となることが期待されています。いわば、生活保護法における憲法的位置を担っています。

生活保護の4つの原理

  1. 保護は国家に責任において行われるとする「国家責任の原理」
  2. すべての国民は生活保護法の定める要件を満たす限り、無差別平等に保護を受ける事ができるとする「無差別平等の原理」
  3. 健康で文化的な最低限度の生活の保障をするとする「最低生活の保障の原理」
  4. 保護は、利用し得る財産、能力その他あらゆるものを活用してもなお、最低限度の生活に足りない部分を補足するとする「保護の補足性の原理」

参考:生活保護法 生活保護基準

No.17 ICF

ICFとは、2001年にWHO(世界保健機関)が提唱した、国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health)の略称です。
1981年の国際障害者年以降、障害を個人の問題とするのではなく、環境との関係でとらえる考え方が広まってきています。 ICFは、こうした考え方を、理論的に整理したモデルです。
ICFでは、本人の活動や社会参加にプラスに働く要素(例えば、本人が能力を発揮できるように環境を整えたり、援助をしたりする支援者など)を、「促進因子」と呼んでいます。この考え方でいくと、たとえ支援者であっても、その働きかけ如何によっては、本人にマイナスに働く「阻害因子」になってしまうといえるでしょう。つまり、障害があること自体が原因で、「活動」や「社会参加」が実現しないのではなく、周囲の環境との関係に本人の能力の発揮は多分に影響されるということが分かります。
ICFの図でいうと、「心身機能」→「活動」→「参加」という流れに、環境因子が影響を与えている様子が見てとれます。

International Classification of Functioning, Disability and Health

No.16 自己決定

利用者とその家族が、精神保健福祉と精神医療で、もっと多くの課題に自己決定ができる立場が与えられることが、今後の精神保健福祉と精神医療の発展のためには不可避の本質的な重要性を持っています。 活動の主眼を人権におくことにより、必然的に予防と早期介入が重要な課題となってきます。予防と早期介入は、これまで取り上げられることが少なかったが、利用者の自分の健康への自覚と、そのための自己責任・自己決定により、医療・福祉従事者側と協同で治療的同盟をつくり出すことが戦略的に求められるからです。これまでの精神保健・精神活動では、精神障害の予防、とりわけ一次予防は高すぎる目標として扱われて来ませんでした。
また、二次予防は、近年、統合失調症家族の表出感情を手掛かりとする家族への働きかけが具体化する中で、ひとまず、手掛かりがみえ始めているが、それを医療従事者の技術として矮小化しないためにも、利用者の健康への自覚と自己責任・自己決定による活動への参加がなければなりません。それを達成するためには、決断と行動を助ける適切な訓練と広範な情報収集力が伴わなければなりません。 精神医療では、利用者と家族の意思決定とは、個人的予防と受療活動への意思決定能力であり、これはまた、どのタイプの治療法が適切か、どのような治療行程が適切かについて、利用者と家族が意志決定をできることでもあります。自助・互助グループの支援活動の発展は、これらの意志決定を進める上で必要な情報と支援が与えられる機会を各段に増大させています。
医療についての評価や情報では、いまだに医療サービス供給者側の情報専有の傾向が強いとしても、しだいに利用者側への情報開示は進み、多くの情報が公開されることになるでしょう。

No.15 地域援助技術における評価

福祉計画における評価のこれまでの代表的な視点には、次の3つの視点があります。

  • ●タスクゴール
    計画に盛られたサービス目標量や数値目標の達成の過程、ニーズの充足度などのアウトカム評価
  • ●プロセス・ゴール
    計画作成の過程で利用者・市民がどのように意識を変化させてきたか、計画づくりを通してネットワークがどの程度強まってきたかなど作成過程を重視した評価
  • ●リレーションシップ・ゴール
    行政と利用者の力関係の変化や、地域の権力構造の変化など福祉を取り巻く政治力およぶパートナーシップやコラボレーションの視点からみた変化度の評価

基本指針で直接求めている評価は、このうちタスク・ゴールであり、目標に対する到達点を単純に計るもので、計画の進行管理では代表的なものであります。 しかし、タスク・ゴールだけであれば計画進行の適切性、費用対効果、利用者や地域社会の意識変化、サービス供給システムの変化など計画そのもののシステム管理に関する評価視点は不十分であります。システム評価と計画に盛られた内容の評価は区別した上で、その全体を評価しなければなりません。
しかし、行政評価の多くが実施の結果どうであったかというアウトカム評価に傾斜してあり、進行管理(モニタリング)に組み込まれた評価システムが不足しているのが現状であります。

No.14 リジリアンス

リジリアンスとは、※ストレングスモデルのケアマネジメントから導き出されたストレングス視点の鍵となる概念の一つであり、回復する力、弾力性、心の発達を守るしなやかさなどと表現され、「悪い状態に対してうまく適応する能力のことであり、不幸な出来事やストレス、喪失などの様々な人生の苦難を切り抜けて生き続け、跳ね返し、乗り切る能力やしなやかさである」と定義するができます。
このリジリアンス概念は、当初苦難を乗り越えてきた子どもに関して言及されてきたが、今日では、子どもだけでなく青年や成人であっても不幸な出来事やリスクを乗り越え、時には以前よりも増して実質的な能力の発達が認められることが明らかにされています。そして、リジリアンスは、人々の持つ回復力に焦点を当てた概念として発展しています。 ※ストレングスモデル
利用者が本来持っている能力や環境側の潜在能力にも着目し、それを引き出し、活用したり、セルフケア能力を高めることに重点を置くものです。

No.13 ラポール

ラポールは、もともと心理学の用語であり、セラピストとクライアントの間の、互いに信頼し合い、安心して感情の交流を行うことができる関係が成立している、心的緩和状態を表します。「ラポール」は、どのような人間関係においても必要とされる、意思疎通を図るための土台となっており核家族化や少子化により、成長過程において、コミュニケーションの基本となる「相互に信頼している状態」が注目され、広く一般に「ラポール」という言葉が使われてきています。
基本的には、ラポールは相手に対する「誠意」「好意」「敬意」により築かれますが、特定のコミュニケーションスキル(※ペーシング・※ミラーリング)により意図的にラポールを築くことも可能です。
※ペーシング:相手の話し方(声のスピード、音程、大小、リズム、呼吸等)に自分自身の話し方を合わせる事。
※ミラーリング:相手と動作、しぐさを合わせること

No.12 愛着(アタッチメント)

乳児と養育者(母親、父親等)に芽生えるなど、特定の相手との関わり、情愛的きずなのことを言い、生後2年程で形成されます。
乳児は、愛着対象(養育者など)を安全基地のように感じ、生まれつきある愛着(アタッチメント)が、その後の発達や人格形成、他者との信頼関係を築くことができるかどうかなどに影響していくと言います。 他にも、猿の親子のように抱っこされている状態など、接触快感が愛着(アタッチメント)の形成には、重要であるとした考えもあります。 乳児と養育者の関わりは、今後のこどもの発達に大きく影響してしていく大切な時期なのです。

No.11 地域組織化と福祉組織化

地域組織化
地域組織化とは、社会福祉サービスを必要とする個人とその家族が地域社会で生活していくために、住民の福祉への参加や協力、意識と態度の変容を図り、福祉コミュニティづくりを進めるものであり、社会福祉サービスを必要とする個人とその家族を中心に、地域住民の参加によって組織されることを言います。

福祉組織化
福祉組織化とは、福祉サービス等の社会資源を効果的、効率的に提供するため、生活に関連する社会資源のシステム化、ネットワーク化によって、社会福祉機能の向上を図るもので、福祉及び関連サービス、専門職、施設、機関、団体等のサービス提供主体と福祉問題を抱えた当事者を中心とする住民の組織化が含まれます。

地域活動を進めて行くためには、「福祉組織化」「地域組織化」の二つに取り組むことが重要であるとしています。

No.10 ICF(国際生活機能分類)

ICFは、身体・個人・社会の3つの視点に立って、ある健康状態にある人に関する関連する様々な領域を心身機能・身体機能、活動、参加といったプラス面からみるような視点で系統的に分類するものであり、個人の生活機能、障害および健康について記録するものに役立つものであります。
生活機能が、心身機能・身体構造・活動(課題や行為の個人による遂行の事)・参加(生活・人生場面への関わりのこと)の包括用語として用いられています。 すべての構成要素(心身機能・身体機能・活動、参加)同士、背景因子としての※環境因子と個人因子も※相互作用するとあげています。

※環境因子
人々が生活し、人生を送っている物的な環境や社会的環境、人々が社会的な態度による環境を構成する因子のことであります。

※個人因子
個人の人生や生活の特別な背景であり、健康状態や健康状況以外のその人の性別・人種・年齢・体力・ライフスタイル・習慣などの特徴から成ります。

No.09 アウトリーチ

アウトリーチとは、英語で「手を指しのばす」という意味です。
社会福祉の利用をする人々の全てが、自ら進んで申請をするわけでなく、むしろ社会福祉の実地機間がその職権により潜在的な利用希望者に医療・福祉関係者が手を指し伸べ、利用を実現させるような積極的な支援を行うことです。
福祉や医療における、地域で支援を必要とする状況にありながら専門的サービスに結びつきにくい者のもとに、専門家側が出向いて、支援するサービスです。 直接的な支援、受診など問題解決に向けた動機づけ、対象者の発見やニーズの掘り起こしが行われます。
このように、アウトリーチは自発的に援助を求めてこない利用者に対するアプローチの方法で、相談機関から地域に積極的に出て利用者と対面し潜在的なニーズを表に出せるよう援助して行くことが医療、福祉の現場で求められています。
※ こちらに更に詳細が掲載されています。

No.08 ネットワーク

ネットワークとは、「網状のつながり」を意味しますが、社会福祉や市民運動でネットワークという場面、ある目的や価値を共有している人々の間で、既存組合の所属や居住地域を超えて、人間的な連携を築いていく活動を意味しています。ネットワークとネットワーキングの違いは、ネットワークはその状況を意味し、ネットワーキングは、ネットの形成過程、活動方法の動態的な観念として用いられます。 精神保健分野でネットワークが注目されるようになってきたのは、精神障害者の地域生活を支援して行く活動において、ソーシャルワークにおけるコミュニティワークの重要性が認識され、地域における様々なフォーマル(制度、病院、専門家等)、インフォーマル(地域住民、ボランティア等)な人的資源を含めた社会資源のネットワーク形成が必要不可欠であることと関連しています。

ソーシャルワークにおけるネットワークの機能
●直接対人援助における関係機関・者のつながりと協働
●ソーシャルサポート体制の構築を目的とし各関係機関・者の役割の再認識と協働 ・精神障害のある当事者同士の支え合いが仲間を作り、共通の目標・課題達成のための組織化と協働
●あらゆる人々が参画した地域づくり、まちづくりを構築していくための協働  等

「協働」は、関係機関・者同士が、上下関係や指示的な関係でなく対等な関係で、各々が役割を持ち、共通の目標に向かって共に活動するという意味です。 ネットワークの形成は、段階的にあるいは、互いに影響し合うように結びついて形成されていきます。ソーシャルワークにおいて、人と環境との相互作用に焦点を当て、あらゆる立場の人々と連携をし、パートナーシップをもって協働していく過程は、ソーシャルサポートネットワークの形成に取り組むことであります。

No.07 社会福祉のおけるニードの話

一般的にニードとは必要・要求の意味で使われますが、社会学的な意味のニードとは、社会生活の中での基本的な必要・要求として一定の標準を満たしたものや専門家が判断したものを言います。

高橋紘士によるニード
 顕在化したニード:サービス提供側によって把握され、ニードが表出されている需要化 されたニードと表出されているが、サービス提供者側に把握されていないニード 潜在的ニード:サービスに向けて表出されていないニードと表出も感得もされていないニード

ブラットショーによるニード
 規範的ニード:専門家が「望ましい」基準との対比においてニードがあると判断した場合
感得されたニード:ニードがあることを、本人が自覚している場合
表明されたニード:感得されたニードがサービス利用の申請といった行動に転化した場合
比較ニード:サービスを利用している人と同じ特性を持ちながらサービスを利用していない場合

ニードはどのようなもので満たされるのか
ニードは貨幣的ニード:金銭の給付によって行うもの非貨幣的ニード:金銭ではなく、医療や福祉サービス等によって対応すべきもの代替・補完的ニード:家族等において充足可能なもの即時的ニード:社会的な解決を求められるもの

一人ひとりのニードは、表出度合いが違うため、援助者は、感じ、考え、様々な視点から利用者の欲求が満たされ、より利用者自身が幸せになることができる方法を、利用者の方と一緒に探しています。

No.06 ソーシャルインクルージョン

ソーシャルインクルージョンは、「全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげよう、社会の構成員として包み支え合う」という理念であります。EUやその加盟国では、近年の社会福祉の再編にあたって、人種や宗教等に起因する社会からの一方的な差別や隔離等の社会的排除に対処する戦略として、その中心的政策課題の一つとされています。
ソーシャルインクルージョンは、近年の日本の福祉や労働施策の改革とその連携にもかかわりの深いテーマであります。2002年、厚生省(当時)でまとめられた「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会報告書」では、社会的に弱い立場にある人々を社会の一員として包み支え合うソーシャルインクルージョンの理念を進めることが提言されています。
一方、教育界を中心にここ数年間で広がってきた概念としてのインクルージョンは「本来的に、すべての子どもは特別な教育的ニーズを有するのであるから、様々な状況の子どもたちが学習集団に存在していることを前提としながら、学習計画や教育体制を最初から組み立てなおそう」「すべての子どもたちを包み込んでいこう」とする理念であり、これは特別支援教育へとつながっています。
※ こちらもご参照ください。

No.05 モラトリアム

モラトリアムは、ラテン語の“mora”「遅延」“moran”「遅延する」から由来した、人間の発達を可能にする準備期間のことで、エリクソンが命名しました。青年が社会人としてのアイデンティティ(独自性・自己認識)を確立するための様々な役割を試み模索することを、社会は心理・社会猶予期間として認められていると考えました。
しかし、高学歴化が進み、静的に成熟しながらも親に経済的・精神的に依存する状態が長く続く現代の日本社会では、モラトリアムが本来の意味を失い、社会的責任回避の意味合いが強くなってきています。自意識過剰になり、社会人としての同一性選択を回避し、無気力になり、友人関係に不安を抱くなど、エリクソンが同一性拡散として記述した事柄は、長期化するモラトリアム社会の危険性を表していると言われています。 誰であっても、少し立ち止まって考える時間や寄り道する時間はあり、そのような時間があるからこそ後に、その方らしい生活や生き方ができるのだと思います。

No.04 ユニバーサルデザイン

「ユニバーサルデザイン」とは、「ユニバーサル」は、普遍的な、全体の、という意味があるように、「すべての人のためのデザイン」を意味しています。年齢や障害の有無にかかわらず、最初からできるだけ多くの人が利用できるようにデザインすることをいいます。 「ユニバーサルデザイン」は、1980年代に、アメリカのノースカロライナ州立大学のロナルド・メイスによって明確された7つの原則があります。

ユニバーサルデザインの7つの原則

  1. 誰にでも使えて手に入れる事ができる(公平性)
  2. 柔軟に使用できる(自由度)
  3. 使い方が簡単にわかる(単純性)
  4. 使う人に必要な情報が簡単に伝わる(分かりやすさ)
  5. 間違えても重大な結果にならない(安全性)
  6. 少ない力で効率的に、楽に使える(省体力)
  7. 使う時に適当な広さがある(スペースの確保)

No.03 リカバリー

リカバリーとは、直訳すると、「回復」という意味です。しかし、ここでいう「リカバリー」とは、病気や障害による様々な規制を自ら乗り越えて、自分の人生を充実、希望に満ちた生活をすることであります。また、病気や障害によって失われた家族や友人等を含めた人間関係を取り戻し、生活する地域の中で社会関係を再構築していくことです。

リカバリーの過程
自らの病気や障害の体験を受け入れ、それらを成長させるために自らの体験を活用していくことです。言いかえれば、病気になったことを受け入れたうえで、新しい自分の生き方を考えていくと同時に、未来に向かっていく姿勢が大切になります。 具体的には、自分の生きる意味や目的を見つけることができるように希望や夢を大切にすること。また、多くの経験をする中で、自己認識や自己理解を深めていくこと。満足でき、希望に満ちた生活や社会貢献をすることができる生き方などが大切のなることであります。

No.02 エンパワメント

従来のさまざまな考え方の枠組みが、障害者の「能力」や「権限」を訓練や指導によって後から付加されるものとみなしてきたのに対して、エンパワメントという考え方のもとでは、「障害者には本来ひとりの人間として高い能力が備わっているのであり、問題は社会的に抑圧されていたそれをどのように引き出して開花させるかにある」と考えます。
つまり、社会的な抑圧のもとで、人間としての生き方が保障されてこなかった障害者自身に力をつけて自己決定を可能とし、自分自身の人生の主人公になれるようにという観点から、あらゆる社会資源を再検討し、条件整備を行っていこうとするのがエンパワメントという考え方です。

No.01 ノーマライゼーション

障害者や高齢者などの社会的に不利を受けやすい人々が、他の人々と同じように生活を送り、活動をすることが社会の本来あるべき姿であるという考え方。 また、社会参加しやすい環境の成立を目指す活動や運動のことを指す。