こころのはなし

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鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬離脱

鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬離脱 Sedative, Hypnotic, or Anxiolytic Withdrawal

疾患の具体例

25際、女性。不眠で医師からベンゾジアゼピン系の薬を処方され、2か月ほど服用していました。しかし、インターネットで「ベンゾジアゼピンの長期使用は危険」という情報を読み、自己判断で使用を中止しました。すると、10日ほどして不眠や不安、吐き気などの症状が現れるようになりました。

特 徴

「鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬離脱」の基本的特徴は、それらの物質を数週間かそれ以上にわたって使用したあと、使用を中止(または著しく減量)したことで発現する不快な症状です。 症状は多様で、例えば自律神経が過活動になり、心拍数や呼吸数、血圧、体温、発汗量が上昇することがあります。手の震え、不眠、吐き気や嘔吐、不安、精神運動障害なども起こります。何も治療をしないまま物質を中止(または減量)した人は、20~30%の割合でけいれん大発作が起こります。また、重度の場合は幻視、体感幻覚、または幻聴、錯覚が起こります。それらは通常、せん妄に伴います。以上の症状のうち、2つ以上が該当することが診断の要件です。

離脱症状の重症度は、その物質の使用量や使用期間によってかなり異なります。ベンゾジアゼピン系の場合は、比較的低用量で短期間の使用であっても離脱が起こり得ます。仮に、ジアゼパムを1日10~20mg、1か月間服用していただけだとしても、物質を急に中断すると離脱症状が起こることがあります。バルビツレート(およびバルビツレート類似物質)の場合は、1日400mgまで使用していた人は軽度の離脱症状を経験し、1日800mgまで使用していた人は起立性低血圧、脱力、振戦、激しい不安を経験することがあります。1日800mg以上の高用量の場合は、食欲不振、せん妄、幻覚、反復性けいれん発作が生じる可能性もあります。

なお、物質の使用が長期的であるほど、より高用量であるほど、重度の離脱症状が生じる可能性があります。特に、毎日40mgのジアゼパムは臨床的に意味のある離脱症状を起こしやすく、もっと高用量の(例:100mgのジアゼパム)は、離脱けいれんやせん妄を起こしやすいことがわかっています。

有病率

この障害の有病率は明らかになっていません。

経 過

この障害が起こる時期や重症度は、一般的に物質の半減期から予測されます。作用時間が約10時間またはもっと短い物質(例:ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム)は、血中濃度が減少する6~8時間以内に離脱症状が生じ、2日目にピークを迎えます。そして4~5日目までに改善していきます。もっと半減期の長い物質(例:ジアゼパム)の場合、1週間ほどは症状が現れず、強さのピークは第2週目です。第3週~第4週にかけて著しく改善していくかもしれません。ただ、症状がずっと弱く、数か月も続くことがあります。

治 療

ベンゾジアゼピン系:
ベンゾジアゼピン系薬物の中には、体から緩やかに排泄されるものがあり、その場合は離脱症状が現れるまで数週間かかります。けいれん発作などの症状を防ぐために、薬の量を徐々に減らすことが推奨されています。

バルビツレート系:
バルビツレート系薬物は離脱中に突然死する恐れがあります。それを防ぐために、昏睡状態あるいは極度の中毒症状の患者は、急にバルビツレート系薬物の使用を中止してはいけません。医師が離脱症状の消える薬用量を十分に確かめる必要があります。

なお、離脱が完了した患者は、再びその物質を使用したくなる欲望を克服しなくてはなりません。バルビツレートを非バルビツレート系の鎮静薬または催眠薬に置き換える方法もありますが、結果的に非バルビツレートの物質に依存するようになることが多いようです。バルビツレートから離脱した患者を物質から遠ざけるためには、精神科的援助や地域支援を交えたフォローアップ治療が不可欠です。

診断基準:DSM-5

  1. 長期間にわたっていた鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用の中止(または減量)
  2. 以下のうち2つ(またはそれ以上)が、基準Aでの鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用の中止(または減量)の後、数時間~数日の間に発現する。
  1. 自律神経の過活動(例:発汗または1分間に100以上の心拍数)
  2. 手指振戦
  3. 不眠
  4. 嘔気または嘔吐
  5. 一過性の幻視、体感幻覚、または幻聴、または錯覚
  6. 神経運動興奮
  7. 不安
  8. けいれん大発作
  1. 基準Bの徴候または症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
  2. その徴候または症状は、他の医学的疾患によるものではなく、他の物質の中毒または離脱を含む他の精神疾患ではうまく説明されない。

該当すれば特定せよ
知覚障害を伴う:この特定用語は、現実検討が保たれた状態での幻覚、または聴覚、視覚、触覚性の錯覚がせん妄の存在なしに生じる場合に記されるかもしれない。

※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)
『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)

皆様へのお願い
非合法薬物などの治療には専門的対応が必要となります。当院ではこれに対応することはできませんので、専門の医療機関(神奈川県立精神医療センター/大石クリニック)をご受診いただけますようお願いいたします。あらかじめご了承ください。