こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
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間欠爆発症/間欠性爆発性障害

間欠爆発症/間欠性爆発性障害 Intermittent explosive disorder

疾患の具体例

22歳、男性。営業職として就職しましたが、お客さんに対して怒鳴り散らしたり、怒りに任せてテーブルやいすを蹴ったりすることがたびたびあり、解雇されました。怒りが爆発するきっかけは、商談が長引いたり、お客さんの言い方が気に入らなかったりなどささいなことです。プライベートでも、友人や恋人の態度が気に触って怒りを爆発させることがあり、人間関係が長く続きません。爆発的な行動は10分ほどで収まり、その後は後悔の念にかられます。自分の怒りの扱いづらさは異常ではないかと感じています。

特 徴

間欠爆発症は、急激に怒りや感情を爆発させ、激しい言葉で攻撃する障害です。時に暴力を振うこともありますが、通常、相手が負傷したり物が壊れたりするほど激しくはありません。発生する頻度は3カ月平均で週2回ほど、30分もたたないうちに収まるのが典型的です。ただ、より重度の場合は、人にけがをさせたり、物を壊したりするほど激しい爆発的な行動を起こします。頻度はそれほど高くなく、1年に3回程度です。
爆発的な行動は、友人や仲間の何気ない一言や、自分の思い通りにならないことなど、通常は攻撃的な行動に結び付かないような出来事がきっかけとなります。あらかじめ計画された行動ではなく、何か利益(金銭、権力など)を得るための行動でもなく、怒りや感情を抑えきれず衝動的に生じる行動です。本人は、落ち着きを取り戻したあとに後悔したり,自己嫌悪に陥ったりします。 間欠爆発症のある患者さんは、この障害があることで明らかな苦痛を感じており、仕事や対人関係の問題を抱えています。経済的に困窮したり、爆発的な行動をとったことで警察に通報されたりする人もいます。
なお、6歳未満の子どもや、それに相当する発達水準にある人、またはその攻撃的爆発が他の精神疾患や医学的疾患、物質の生理学的作用によって説明できる人には、間欠爆発症の診断はつきません。また、6~18歳の子どもで、適応障害の一部として攻撃的行動が起こっている場合も、間欠爆発症の診断はつきません。

有病率

アメリカにおける間欠爆発症の1年有病率は、約2.7%(狭義の診断)です。この障害は、若年者(35~40歳より若い人)のほうが、年齢の高い人(50歳以上)よりも有病率が高いことがわかっています。いくつかの研究によって女性より男性の有病率が高い(オッズ比1.4~2.3)と報告されていますが、性差はないという報告もあります。

経 過

爆発的な行動の反復は、小児期後期~青年期にもっともよく見られ、40歳を過ぎて初めて発症することはまれです。典型的には持続性の障害ですが、一過性のこともあります。多くの場合、中年期になると行動の激しさが減っていきますが、ほかに負っている障害が増強すると、激しい爆発的な行動の頻度が増すこともあります。

原 因

気質要因:情20歳になるまでに、身体的および情動的外傷を負ったことのある人は、間欠爆発症になる危険が高まります。この障害のある人の多くは、幼少期に養育者のアルコール依存や暴力など、身の危険を感じる環境に育っています。
精神力動学的因子:感情の爆発的な行動は、自己愛が傷つけられることへの防御として生じる、という説があります。怒りを爆発させることで対人関係に距離ができ、それ以上に自己愛が傷つくことを回避できる、という考え方です。
遺伝要因と生理学的要因:間欠爆発症のある人の第一度親族は、この障害になる危険が高まります。また、双生児研究によって衝動的攻撃性は遺伝の影響があることが示されています。神経生物学的には、セロトニンが異常に作動することが関係していると考えられています。

治 療

薬物療法と精神療法を併せた治療が、もっとも成功しやすいと考えられています。治療目標は、衝動がどのようにして爆発に至るかを理解させ、爆発的な行動ではなく言葉で表現できるようにすることです。しかし、精神療法を行っている最中に爆発的な行動が生じることもあり、治療は簡単ではありません。 薬物療法としては、抗てんかん薬が長く使われてきましたが、必ずしも効果があるとは限りません。抗精神病薬や三環系抗うつ薬が有効な場合もありますが、そのような時は統合失調症や気分障害である可能性が考えられます。また、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などは、衝動性や攻撃性を低下させることに有効です。

診断基準:DSM-5

  1. 以下のいずれかに現れる攻撃的衝動の制御不能に示される、反復性の行動爆発。
  1. 言語面での攻撃(例:かんしゃく発作、激しい非難、言葉での口論や喧嘩)、または所有物、動物、他者に対する身体的攻撃性が3ヵ月間で平均して週2回起こる。身体的攻撃性は所有物の損傷または破壊にはつながらず、動物または他者を負傷させることはない。
  2. 所有物の損傷または破壊、および/または動物または他者を負傷させることに関連した身体的攻撃と関連する行動の爆発が12カ月間で3回起きている。
  1. 反復する爆発中に表出される攻撃性の強さは、挑発の原因またはきっかけとなった心理社会的ストレス因とはひどく釣り合わない。
  2. その反復する攻撃性の爆発は、前もって計画されたものではなく(すなわち、それらは衝動的で、および/または怒りに基づく)、なんらかの現実目的(例:金銭、権力、威嚇)を手に入れるため行われたものではない。
  3. その反復する攻撃性の爆発は、その人に明らかな苦痛を生じるか、職業または対人関係機能の障害を生じ、または経済的または司法的な結果と関連する。
  4. 暦年齢は少なくとも6歳である(またはそれに相当する発達水準)。
  5. その反復する攻撃性の爆発は、他の精神疾患(例:うつ病、双極性障害、重篤気分調節症、精神病性障害、反社会性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害)でうまく説明されず、他の医学的疾患(例:頭部外傷、アルツハイマー病)によるものではなく、または物質の生理学的作用(例:乱用薬物、医薬品)によるものでもない。6~18歳の子どもでは、適応障害の一部である攻撃的行動には、この診断を考慮するべきではない。

注:この診断は、反復性の衝動的・攻撃的爆発が、以下の障害において通常みられる程度を超えており、臨床的関与が必要なである場合は、注意欠如・多動症、素行症、反復挑発症、自閉スペクトラム症に追加することができる。

※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)
『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)