こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。

     

解離性昏迷

F44.2 解離性昏迷 Dissociative stupor

疾患の具体例

7歳、女性。両親が旅行中に飛行機事故に遭い、突然、亡くなってしまいました。大きな事故だったため、テレビでも報道され、それを見て呆然としたまま動かなくなりました。周囲が心配して声をかけても一切反応せず、自分から話すことはありません。それでも、呼吸や心臓の鼓動はあり、目は開いているため、気絶したわけではなさそうです。やがて動くようになりましたが、精神的に不安定な状態が続き、精神科クリニックを受診。当時のことを話すと、医師は「解離性昏迷だったのでは」と言いました。

特 徴

解離性昏迷は、心が耐えられないほどのショックや大きな絶望を感じたときに生じる、解離性障害の一種です。昏迷とは、意識があるにも関わらず、光や音など外的刺激に対する反応が弱まる、あるいは欠如し、長い時間、ほとんど動かないまま横たわるか、座ったままの状態が続くことを言います。本人から言葉を発したり、自発的に動いたりすることもほとんどありません。場合によっては、多少の意識障害もあり得ますが、筋緊張や呼吸、時には目が開いたり眼球が動いたりするため、眠っているのでも意識障害に陥っているのでもないことは明白です。
きっかけは、大災害や事故、暴力への遭遇、大切な人の突然死など、人によって異なります。検査を受けても身体的な問題や精神的問題は見当たりません。他の解離性障害と同様に、最近受けたストレス、または顕著な対人関係問題や社会問題の有無をもとに診断されます。なお、同じ昏迷でも、緊張型統合失調症の昏迷は、先に統合失調症を示唆する症状が現れますが、解離性昏迷にはそうした様子はありません。症状が比較的ゆっくり進むうつ病性、躁病性の昏迷とは違い、解離性昏迷は突然、発症することがあります。

診断基準:ICD-10

確定診断のためには、以下のことが存在しなければならない。

  1. 上述したような昏迷。
  2. 昏迷を説明するような身体的障害あるいは他の精神障害がないこと。
  3. 最近のストレス性の出来事ないし現在の問題の証拠。

診断基準:DSM-5

記載なし

※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)