こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。

     

統合失調感情障害,躁病型

F25.0 統合失調感情障害,躁病型 Schizoaffective disorder,manic type

疾患の具体例

22歳、男性。営業職として会社勤めをしています。セールストークはさほど得意な方ではなく、仕事に悩んでいました。ところが、ある時期から冗舌になり、営業先の担当者に「自分は社内の営業マンのナンバーワンだ」「会社で大きな権力を持っている」「高貴な家の生まれである」など、事実と異なることを話すようになりました。やがて社内でも同様の言動をするうえ、常にそわそわと落ち着きなく、ささいなことで激高するようになりました。日頃、接触のない他部署の社員が自分の後をつけてくると思い込み、上司に相談することもありました。会社の産業医の勧めで精神科クリニックを受診すると、「統合失調感情障害,躁病型」と診断されました。

症 状

統合失調症と躁病の症状が、顕著に現れる障害です。 統合失調症の症状としてよく見られるのが「関係妄想」です。これは、自分にはまったく関係のない人の発言や行動が、自分を批判したり、嘲笑したりしているように感じる妄想です。人によっては、誰かが攻撃している、後を付けられているなど「被害妄想」が生じることもあります。あるいは、「誇大妄想」といって、自分は特別な能力を持っている、大富豪であるなど、現実からかけ離れて自己評価が高くなる人もいます。
これらの妄想に加えて、ほかの統合失調症の症状も生じます。例えば、自分の考えていることが意図せず他者に伝わっている、干渉されている、あるいは誰かが自分を支配しようとしていると感じるなど、病的な現象を体験することです。
もう一方の躁病の症状は、通常、自尊心が異様に高まったり、気分が高揚して誇大観念を持ったりします。時には周囲からの刺激に過敏になり、激しい興奮状態になったり、攻撃的な行為や、被害的な気持ちになったりすることがあります。見た目は元気で、活力がアップしているように見えます。よく動き回り、行動に落ち着きなくなることが多く、ものごとに集中しにくくなりがちです。

予 後

通常、急性に発症する多彩な精神病です。日常における行動に大きく支障を来しますが、数週間以内に寛解するのが普通です。

診断基準:ICD-10

顕著な気分の高揚、あるいはそれほど明瞭でない気分の高揚に易刺激性や興奮性が結び付いたものがなければならない。同一エピソード中に、少なくとも1つ、できれば2つの典型的な統合失調症状[統合失調症(F20.-)のガイドライン(a)~(d)に特定されるようなもの]が、明らかに存在しなければならない。 このカテゴリーは単一エピソードの躁病型統合失調感情障害、および大多数のエピソードが躁病型である反復性の障害の両方に使用すべきである。

断基準:DSM-5

記載なし

※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)