こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。

     

精神病症状を伴う躁病

F30.2 精神病症状を伴う躁病 Mania with psychotic symptoms

疾患の具体例

27歳、女性。人事異動で責任の重い部署に移り、やりがいを感じていました。連日、睡眠時間を削って朝早くから深夜まで働き、休日出勤も当たり前の生活を続けました。1年近くたった頃から気分が落ち着かず、仕事相手と話している途中に興奮状態になることが増えました。自信がみなぎり、自分は誰よりも優れている、近い将来、会社の重役になると信じ込んでいます。誰かに意見を言われると怒り出し、いかに相手が酷いかを会社中の人に話しました。周囲とのトラブルが増え、産業医の勧めで医療機関を受診すると「精神病症状を伴う躁病」と診断されました。

症 状

気分が高揚したり、興奮状態になりやすかったりする躁病の1つですが、F30.1「精神病症状を伴わない躁病」より重症で、精神病症状を伴います。自分は偉い、優れているという自尊心が過剰になり、誇大妄想へと発展します。また、外部からの刺激に過敏だったり、疑い深かったりする症状が被害妄想につながります。より重症の場合は、宗教的な内容の妄想が顕著になることもあります。 話し方はせわしなく、相手と会話することを強く求めます。思いつくままに言葉を発するため、多弁で早口になりがちで、周囲からは何をしたいのか、何を言いたいのかがわからなくなることもあります。 興奮して身体的な動作が活発になり、攻撃や暴力に至る人もいます。他人を攻撃するほか、自分の健康管理ができなくなり、危険な状態に陥る場合もあります。例えば、水を飲まなくなり、脱水状態になるなどです。

治 療

統合失調症と似た部分があるため、医療機関では必要に応じて、妄想や幻覚が気分と一致するかどうかを確認します。妄想や幻覚の内容が、その時の気分と一致せず、かつ継続する場合は統合失調症状感情障害と診断されることがあります。診断結果に合わせて、薬物療法などを行います。

診断基準:ICD-10

この障害の最もありふれた問題の1つは、統合失調症との鑑別であり、とりわけ軽躁病を経て展開していく段階が見逃されていたり、患者が疾患の極期にだけ診察される場合がそうである。そのような時の患者では、広がった妄想、了解不能な会話および激しい興奮のために、基盤にある感情障害がはっきりしないことがある。抗精神病薬療法に反応する躁病患者で、心身の活動性の水準が正常に戻った時に、まだ妄想や幻覚が残っている場合にも、同様の診断上の問題が起こりうる。統合失調症状に特異的とされる幻覚や妄想が気分と一致しないで認められることが時にあるが、もしこれらの症状が優性で持続的ならば、統合失調症状感情障害の診断がより適切である。

診断基準:DSM-5

記載なし

※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)