こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。

こころの健康アラカルト No.241~250

No.250 大切なペットを失って苦しんではいませんか?

愛犬・猫によって癒されたり元気をもらったり、または子どものような存在だったり、「ペットは家族の一員」という人も多いのでは。でもそんな大切なペットが死んでしまったら・・・。 大切な家族の一員を失い、その空虚感や喪失感に耐えられず日々元気がなく泣き暮らしてしまう・・・。また愛犬の鳴き声が聞こえたり幻覚が見えたり。こういった「ペットロス」になる人が増えているそうです。 しかし「ペットロス」は、自然な現象ともいいます。悲しみをきちんと悲しむ”喪の作業”を行い、悲しみをきちんと受け止めて処理をしていくのは大切なことだとか。 この時間がないと心の病気を引き起こすこともあるので、無理に励ましたり気晴らしを勧めるよりは、そっと見守って上げたほうがよい場合も。 またペットの一生は人間よりも短いということをきちんと理解して、複数または別の種類を飼うのも「ペットロス」を予防する方法とか。 しかし激しい落ち込みが数ヶ月、数年と続き食事が作れない、働くことができないなど日常生活が営めなくなったり、愛犬が事故に遭ってしまい後を追おうと考えてしまうなど、心の病気につながってしまう可能性がある場合は、専門科の受診が必要かもしれません。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/07/19

No.249 仕事ばかりにのめりこんではいませんか?

仕事のことが一日中頭から離れず、それ以外のことは無頓着になってしまう・・・ということはありませんか? 例えば、プロジェクトで来月までは残業や休日出勤が続くということではなく、日々残業続きで休みも取らずに働いているのは「仕事依存」の可能性があるかもしれません。 仕事をすればする程成果があがり、満足度が高まると快感が生まれてくるそう。そして次第に仕事をしていないと満足できなくなり、病気でも医者に行かず働いたり、5人のうち3人が残業していると”みんな”残業しているという意識に陥ってしまう危険性も。 1ヶ月100時間の残業を3ヶ月続けると、心疾患や脳血管障害になる可能性が高まるとも言います。 また、仕事以外のことに興味が持てず、家族はそっちのけ。家族揃っての食事や外出もできなくなって、ついには家庭不和に陥ってしまうことも。 最近は女性の「仕事依存」も増えているそうです。 仕事をしてもしても快感が得られなくなってしまい、苦痛だけが残り燃え尽きてしまうと、過労自殺や鬱状態になってしまう可能性も。心身の健康と家庭を守る為にも、本人はもちろん家族も「もしかしたら?」と感じたら、専門科を受診した方がよいかもしれません。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/07/12

No.248 私が悪いから、きっと全てがうまくいかない

「やることなすこと、いつも周りにけむたがられます。もう、いたたまれません。」こんな相談が。 自分の言葉や行動が常に相手に悪い影響を与えてしまう。根拠のないそんな思い込みに苦しんでいる方がいます。このような心の問題は加害妄想や加害念慮などと呼ばれ、極端になると、例えば隣の席に誰も座らないからということだけで、やっぱり自分は悪い、避けられていると思い込んでしまうケースもあります。原因としては身体的不調や否定的な捉え方の癖等が考えられますが、うつ病や統合失調症など心の病が潜んでいる場合も少なくありません。比較的重篤な場合はお薬で、軽い場合は認知行動療法で対処していきます。 一方、実際に判断誤りやミスの連発で周知に支障を来たす場合もあります。躁うつ病や注意欠陥障害等が原因となっているケースです。以前犯した大きなミスを繰り返すのではと恐れ、仕事が手につかなければ心理的外傷体験による心の障害も疑われます。いずれにせよいたずらに自分を責めず、専門医と共に正しく原因を探ることが大切です。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/07/12

No.247 家族のうつに巻き込まれないために(1)

家族のうつ病にはどう対応すればいいでしょうか。 うつ病を患っている家族がいても、他の家族に憂鬱が伝染するようなことはありませんが、周囲が過剰に反応し、疲れきってしまうということはよくあります。本人とのやりとりに苛立ったり、先のことを考え暗澹たる気持ちになったり・・・。病人への適切な対応が分からないため、家族に混乱が生じるのです。 それではどのようにすれば? 他の家族は、通常の規則的な生活を続けていくこと、これがとても重要です。「うつ」の場合、風邪などのように1~2週間頑張ればよくなるということではありません。長期戦になりますから、病人の生活を優先していると、家族の気持ちは続かなくなります。周囲の家族が疲れてくると、病気を抱えた本人の要求が、理不尽でわがままなものに思えてきて、本人につらくあたって関係が悪くなり、病気も悪化してしまうという悪循環に陥ってしまいます。 家族が余裕をもって病気を抱えた人を支えていくことが大切です。誕生日会や法事など家庭の行事は普段通り行いましょう。本人が参加するしないに関わらず、です。そして、本人に参加を無理強いしないことも大切です。緊張を要求する場に連れて行く必要はありません。本人の気持ちを優先してあげてください。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/07/12

No.246 みんなに合わせられない子

クラスのみんながシーンとしているとき急に質問したり、小さなことにこだわり続けて周りをイライラさせてしまう子は、幼児のころには問題ありませんが、学校で集団生活を始めると次第に周囲と摩擦が起きてきます。アスペルガー症候群と言われるタイプですね。私たちは、言葉以外にも目つきや口ぶり、その場の空気を感じて行動していますが、そういう「言葉によらないコミュニケーション」に障害があるのです。怒られてもなぜ怒られるのか理解できませんから、言われたとおりにできずに余計に人を怒らせてしまいます。 気がつかずに思春期を迎えると、友達もできず劣等感を持つようになり、悲しい思いをします。小学校3年くらいまでに周囲の理解と支援が得られるようにしたいですね。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/07/06

No.245 口を開けば非科学的な話ばかり

「娘は最近、霊だとか因縁だとか、そんな話ばかりしてます。何だか心配です。」こんな相談がありました。 精神世界への関心は、いわば一種のサブカルチャーとして認知されているものですし、基本的には個人の信条の領域ですから、それ自体が問題だ、とはいえません。 しかし例えば、家族の意見に耳を貸さず、そのような団体に家財一切を寄付するといった明らかに正常ではない行動に出ようとするなら、心の病気を疑う必要もあるでしょう。心の問題は身体の不調に現れることがあります。不眠や食欲不振、頭痛、息苦しさを訴えたり、不自然に舞い上がったり極端に落ち込んだりする様子が認められたら、その時は、本人ではもうどうしようもない状態に陥っている場合が多いのです。 さらに注意することとして身体的な不調が見られないから大丈夫、と言い切れないのがこの問題の難しい点、例えば妄想性障害のように、身体にサインは現れないけれど実は心の病気だった、という場合もあるからです。いずれにしてもその言動が生活に支障を来たすようなら、専門医に相談されることをお勧めします。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/07/05

No.244 買い物をやめられなくなってませんか?

「今日は嫌なことがあったからちょっと買い物でもしてストレス解消!」とお店に立ち寄るという女性も多いのでは。店員さんが優しく接してくれ、試着をすると「お似合いですよ」とほめてくれる。日常生活で抱えるストレスや心の傷が癒され、忘れられる瞬間かもしれません。 しかし、そんな優越感や満足感が快適な刺激となり、その刺激を求めてついつい買い物をしてしまう・・・。しかし買った洋服やバッグ、靴は使わずに山積みで袋に入ったまま放置されていることも。こうした”買う物ではなく、買う行為”に満足感を覚え、欲しくもないのに、買い物が止められないのは「買い物依存症」の可能性も・・・。最初は100円ショップで買い物をしていたのが、お給料では払えない物になり、ボーナス、さらにはクレジットでどんどん購入するようになってしまうこともあります。 映画を見たり、音楽を聞いたりストレス解消のバリエーションを偏ることなくいろいろと用いることは良いのですが、ストレスの原因と向き合って問題解決を図ることで解決能力が高まり、ストレスが減ってくると言います。でも、「どうしても買い物がやめられない!」という方は、一度専門科を受診してみては。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/07/05

No.243 生理前のイライラは病気?・・・月経前緊張症(PMS) (2)

この記事は、No.230からの続きです。 前回掲載されていた月経前緊張症の治療法と受診する目安はどのようなものなのでしょうか? 投薬だけでなく、心理的な問題が背景にある場合は、カウンセリングと薬の併用が有効な場合があります。リラクセーションやストレスマネジメントといった、在来の心理的な手法を併用することで薬の使用料を半減できる場合もあります。 日常生活に影響がある、会社を休んでしまうなど、社会生活に支障がでてくるようなら受診のポイントです。子どもに手が出てしまうのも受診の目安で、物理的に叩く、蹴る、物を投げるといったことが起きてればもう赤信号。怒鳴り続ける声が止まらないといった場合も受診をしてください。 また、月経前緊張症が起こる生理前の時期以外にも不安感がある、気分の落ち込みが軽くあり生理前にドッと落ち込むといった場合は注意してください。このような場合、もともと軽度のうつ病や軽症の不安障害があり、月経前緊張症の時期に症状が悪化して中等度のうつ病、不安障害のレベルに達してしまうことがあります。月経前緊張症以外の時期になんらかの異常がある場合は要注意です。治療を受けることで症状が中程度以上に悪化することがなくなるだけでなく、普段の生活の質を改善すことができる場合が少なくありません。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/07/05

No.242 躁うつ病は家族やパートナーのサポートが必要です

躁うつ病は心の病の中では比較的少なく、100人に1人の割合でかかる病気です。でも10万人に1人といった内科・外科の病気に比べると多い数字ですね。誰でもかかる可能性があり、男性のほうが若干多い病気です。 Ⅰ型とⅡ型があり、Ⅰ型は激しい躁状態が伴います。行為心拍といって、気分の高揚感を伴って常に何かをしていないと気がすまない状態が出現することがあり、例えば、会社でいくつものプロジェクトを立ち上げ、エネルギッシュに見えるが最後まで完遂しない人、話していても焦点が定まらず話題が転々としてしまうなど。浪費癖で高価なものを収入以上に買ってしまったりもします。 Ⅱ型は見分けにくく、うつ病として治療を開始することが多いです。うつ状態はやる気がない、だるい、周囲に興味がなく頭や体が痛いといった症状です。そのうち、うつから軽躁状態になり、妙に気分がよく高揚感が続き、やや多弁になrます。周囲に対して愛想もよく、Ⅰ型ほどではありませんが浪費癖も伴うことがあります。  躁の時期は、集中力の低下や仕事上のミスもあり、周囲の負担も大きくなりますから、そのままにしておくと危険です。軽躁状態を伴ったⅡ型の躁うつ病は、ジワジワとその人の人生に障害を及ぼしマイナス評価が付いてしまいます。Ⅰ型の躁うつ病患者は躁状態の時は病院に来ませんから、薬も飲まなくなります。家族のサポートで服薬を続け、病状報告もしてほしいですね。 うつ状態になったときは、それがⅡ型の躁うつ病なのか判断することが重要です。それは躁うつ病と、うつ病の治療は根本的に違うからです。躁うつ病は、気分調整薬を使った長期的治療で抗うつ薬を併用することもあります。うつ病なら一定の期間の治療で済むことが多く、8~9割は治ります。また家族の付き添いは必ずしもいりません。 躁うつ病は、軽躁状態になったら、症状が急激に変化するので早期に抑える必要があります。うつ病の人は執着気質で無口、義理堅い人が多いのですが、躁うつ病の人は軽くて調子のよい時期があります。社交的で愛想が良い人が多いので、病的な部分をコントロールできれば良好な社会適応を示すことができます。気になることがあったら、早めに専門医を訪ねましょう。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/06/30

No.241 ゲーム三昧の子どもをや止めさせるには?

「放っておくと何時間でも続けます。夏休み中に改めたいのですが。」こんな相談がありました。 子どもがゲームにはまってしまった、脳の発達によくないのでは・・・。 保護者には心配な点ですね。ゲームに熱中する子は、最近確かに増えています。単に面白いからだけでなく、背景に、実はゲームを子守代わりにする風潮があるようです。ゲーム中は熱中して静かです。家事もはかどり、たまの休日、遊びをせがまれず親ものんびり。外で遊ばせるのも物騒だし。ならば家にいさせて、ゲームにも、まぁ目をつぶるか・・・。思い当たる節はありませんか? 禁止するのではなく、手始めに、時間を決めて守らせて見ましょう。一方で、ゲーム以外の楽しみを提案してあげることです。夏休みなら、植物の成長や動物の飼育等、心を掴むものは沢山あります。徐々にゲームへの固執も薄れていく筈です。しかしどうしても決めた時間を守れず長時間手放せない場合は要注意。不安による心の問題を抱え、高揚感を求めて依存状態になっているケースが考えられます。これは、専門医への早めの相談が必要です。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/06/28