こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。
こころの健康アラカルト No.221~230
- No.230 生理前のイライラは病気?・・・月経前緊張症
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生理前になるとイライラしたり怒りっぽくなったり・・・今回は月経前の緊張症についてお話しましょう。 月経前緊張症(PMS)は、多かれ少なかれ生理のある女性に当てはまる症状といっても過言ではないぐらい普遍的な現象です。 以前は、病気ではないので治療の必要はないと認識されており、本人も周りも当たり前の現象として考えられていました。 しかし、イライラや気分の落ち込みなどの程度の激しい人がいるということや、通常のうつ病や神経症、不安障害、あるいはその他のこころの病気の病状が悪化する時期が生理前にあるというところから、気付かれてきました。 現在は技術的な進歩によって、軽めの抗うつ薬(SSRI)やマイルドな鎮静剤「非定形抗精神病薬」を使用することで、月経前緊張症のイライラ感、落ち込み、不安、悲しみ、猜疑心、怒りっぽいといった症状がかなり軽減できるようになりました。 多くの女性は生理前だからといって、落ち込んだり悩まされたりする必要がないという現実があります。 症状が激しいと感じる方は専門家への受診をお勧めします。 この記事は、No.243へ続きます。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/05/26
- No.229 身体の症状が多岐にわたるなら“心の病“かもしれません
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新緑まぶしいこの時期は、さわやかな季節にもかかわらず意外と心の病を抱えている人が多いとか。よく耳にする5月病も、そのままにしておくと重い心の病になってしまいます。 一般的に心の病というと、悩みが深いなどの心理的状況なのでは・・・と思う人が多いようです。実際は心の問題が体の症状として表れることの方がずっと多いのです。WHO(世界保健機構)の調査でも心の病気にかかっている人の約5割が、頭が痛ければ脳外科、腰が痛ければ整形外科といったように外科を受診しています。残りの人たちは、内科を受診しています。心の病気になって専門医に受診する人は、わずか10%しかいません。 典型的な例では、体がだるいとか食欲がない人が、消化器科を受診し検査しても異常がないと言われる。微熱があり内科を受診したら風邪だと言われ、薬を飲んでも一向に良くならない。胸がドキドキするから、循環器科で検査しても何でもない。このように心の病気が体の症状として出てくるのです。日本でもうつ病にかかった人の10%程度しか神経科・心療内科・精神科を受診しません。食欲がない、だるい。夜眠れないなど症状が症状が多岐にわたる場合は、”心の病気かしら”と疑ってみることも必要です。 5月病というのは純粋な医学用語ではなく、マスコミ用語です。ある種の軽症うつ病、小うつ病の前駆症状、あるいはそのものが起こりやすい、ある種の状況を示している言葉といえます。 ある種の状況とは、期待感いっぱいで入学した大学生が現実と夢の落差に落胆してしまい、士気が低下し、5月連休明けになっても無気力な状態が続くことを指します。そのまま放置しますと無気力になり家に引きこもり、対人交流がないまま重い状態になってしまう場合もあります。大学生だけでなく新社会人にも、連休中に休めない主婦にも起こる病気です。環境が変わることも大きい要因です。新しい環境に馴染めず適応障害を起こしますと、うつ病の症状が出てきます。5月病は理想と現実のギャップと環境変化の両方が来る時期なのです。 5月病は時間経過とともに適応が難しくなりますから、症状が軽いうちに専門医を訪ねましょう。ただ自分で日常生活に気を配ることも重要です。例えばお茶をする、買い物や映画鑑賞、サイクリングなど自分を楽しませることを少しずつ実行しましょう。でも症状がなかなか改善せず、頭痛、めまい、夜目が覚める、食欲低下など体の症状が伴っている場合は、心の専門家を早めに受診することが大切です。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/04/26
- No.228 お母さん! 子育てに悩んではいませんか
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最近、子育てに悩む女性が多いそうです。中には悩みを一人で抱え込んでしまい、「ついイライラして子どもをどなってしまう」「手を上げてしまう」 いけないと思いながらも止まらない・・・など今問題になっている「虐待」に発展してしまうことも。 そんな背景には、周りに小さな子どもを持つ同世代の方が少なかったり、お父さんが忙しく育児を手伝う時間がないということがあるそう。ご主人の帰宅が遅く、話をしたくても疲れてすぐ寝てしまう。一人で育児をするお母さんはくたくたになり家事がおろそかになることも・・・。そんな時は、責めずに理解し協力してあげるということが大切。またパートなどで働く母親が増え、孫の面倒を見る時間が少なくなっているのも現実。でも子育ての大先輩のちょっとした協力が、大きな助けになるかもしれません。 さらには、子育て支援のエンゼルプランを利用したり、幼稚園や学校の行事に参加することにより、お友達のネットワークを広げてみるのもよい方法。同じ悩みを持つお母さんたちと話すことで気分が軽くなり、子どもに優しく接するようになれたという人も多いそう。 でも時には頑張り過ぎず専門医に相談することも必要かもしれません。自分のココロだけでなく、子どものココロが壊れてしまう前に・・・。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/05/24
- No.227 あがり症を何とかしたい
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「結婚式でスピーチを頼まれ、断れませんでした。今から息苦しいほど不安です。」 人前で緊張するのは日常誰もが経験することですが、それが度を超えて、例えば、声が震えて頭が真っ白になる、動悸が激しく息苦しくなる、緊張で何度もトイレに行ってしまう等、極端なあがり症に悩む人もいます。昔は単なる性格の一つと考えられていましたが、今では「社会不安障害」という心の問題として捉えられています。人前に出ると考えただけで不安になり、そういう場面を回避するようになってしまう・・・。もしこんな症状が現れた場合には専門医に相談するのがよいでしょう。 社会不安障害は、薬と行動療法を組み合わせることで約8割の人が改善します。スピーチ前に場面を想像し原稿を何度も読み込むといったイメージトレーニングは行動療法の一つの考え方で効果が認められます。ただ、それだけでは無意識の「怖さ」は克服できないため薬の処方が大切になるのです。投与の時期やタイミングを専門医と十分に相談し効果的に克服して下さい。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/05/17
- No.226 未知との遭遇
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家族や親しい友人とはコミュニケーションをもてるのに、未知だった人とだんだん慣れてくるにつれて、ギクシャクしてくる、それが対人恐怖症です。夫婦や恋人だと倦怠期かな、なんて思いますが・・・。 社会の中で他人同士が学んだり、仕事したりする人間関係は、とても複雑です。強い不安感やトラウマが強く出る人にとっては、それが恐怖感に変わってしまうのです。顔が赤くなってないか、誰かに見られているのではないか、恥をかく、失敗してしまうなど、不安感に襲われます。それに伴い腹痛症状などが起こり、苦痛になり余計に人と関わりがもてなくなっていきます。不安を取り除くように早目に治療すれば、社会との関わりを持てるようになり治る病気です。性格や考え方の問題ではないので、周りの人は理解し、見守る姿勢が大切です。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/05/17
- No.225 ひきこもりの子どもを抱える母親の悩み(2)
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この記事は、No.215からの続きです。 情報を集め、いろいろ話を聞いてもわからないときもあります。そのようなときは、重篤な病気が隠れている場合もあります。臨床心理士や精神科医などの専門家だからこそ、その正体を見抜ける場合もあります。心理検査で、見えにくかった原因が出てくることもあれば、年の近い臨床心理士に本心が出てくることもあります。 やはり早期に相談が大切です。異常を感じてから、1年以上経つと、本人の病状が進行するばかりか、お母さんまで心の病気になってしまうこともあります。「私の子育てが悪かったんだわ」と、自責感を持つようになるんですね。また、上の子が小学校高学年の場合、下のお子さんが「学校に行かない」のをうらやましがり、まねをしてしまう場合があります。2人が不登校となっては、お母さんの落胆は非常に大きくなりますから、やはり早期相談が大切です。専門家の医者の側から、上のお子さんの病気を噛み砕いて説明すると、下のお子さんも納得してくれます。 「大きいお子さんは、素直に専門家のところへ一緒に行くとは限りませんよね」との心配も。 その場合は、お母さんが1人で来て下さっていいのです。状況が分かってから、本人のもとに往診することもできますから。診断が付けばその場でお薬を飲んでもらうこともできます。 (この記事はNo.235に続きます。)
ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/04/12
- No.224 同じ行為を何度も繰り返してしまう
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「戸締りをしたか心配で何度も引き返してしまいます。馬鹿げてると思うのですが。」 確かめたはずなのに何度も確認してしまう、確認しないではいられない、という行為に悩む人は少なくありません。これは「確認脅迫」と呼ばれる症状で、火の元やガス栓を何度も確認してしまう等もそれに当たります。 この他、何度も手を洗わないと気がすまない、といった脅迫症状を訴える方も、最近では増えています。馬鹿げているとわかっていてもどうしようもない、というのが特徴です。これらは1、2回の繰り返しなら治療の心配はありませんが、何回も確認し、それを苦痛に感じるようなら「強迫性障害」が疑われ、専門医への相談が必要になります。治療は主にお薬と、認知行動療法が中心になります。 症状が出なくなりさえすれば、問題は解決するという思い込みは危険です。というのも、場合によってはこの症状の奥にはもっと重大な病気が潜んでいる恐れがあるからです。自家判断は禁物、専門医とよく相談して下さい。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/05/17
- No.223「五月病」になりやすい季節です。
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GWが終わり「いよいよ学校だ!」と思ってもやる気がでなかったり、行きたくなかったり・・・。 もしかしたら「五月病」かな?と思ったことはありませんか。でも実はこの「五月病」という言葉には医学的な概念はありません。 もともとは、大学入学後の学生が目標や楽しみが見出せず、やる気がでない→なんとなく気分が落ち込む→授業をさぼりだす→最後には辞めてしまう・・・。 そんな兆しが、この頃から現れるため。また、だるさや頭痛、肩凝り、寝汗をかく、しびれるなどの身体の不調を訴える人も。これは、新しく社会に出た新入社員にもみられるそう。 こんな時は、おしゃれなカフェに行ってみる、美術館に足を運んでみたり、ウォーキングをしてみたりと"小さな楽しみ〟を見つけるのも良い方法。一人暮らしの子どもには、まめに電話をしてあげるなど、親や周囲の支えも必要ですね。 「お父さんも昔はね~」「高校のお友達の○○ちゃんは元気?」という何気ない会話が、外部とのコミュニケーションを取るよいきっかけになることも。"大きな力になる小さな言葉〟が大切といいます。 でもなかなか解消されないという時は、専門的なチェックも必要かもしれません。早めの受診が早い回復につながります。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/05/17
- No.222 夜眠れないのは心の病気のせい?
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「その日の出来事や人の言葉にとらわれ、最近眠れません。病気なのでしょうか。」こんな質問がありました。 過度なストレス環境にさらされ、夜眠れないと訴える方が増えてきました。ただこの入眠障害、布団に入って1時間以内に眠れるのであればまず大丈夫。加齢と共に眠りの質が劣化するのは仕方ない事で、それが自然だと感じれば問題ありません。 眠りの構造を知る事も大切です。脳は活動後、3~4時間のクールダウンを必要とします。つまり、例えば夜12時まで残業したら眠りにつく最適な時間は3時か4時。それでは身体が持たないからと強制的に眠るわけですが、これが毎日続くと早晩不眠に陥り心の問題を引き起こします。残業は極力控える・・・このように生活習慣に意識を向ける事で改善を見るケースも少なくありません。 問題は、社会不安障害やパニック障害、うつ病などが原因となる不眠です。これらを放置しておくと睡眠導入剤やアルコールに過度に頼りすぎ、深刻な依存症を招く場合があります。 心当たりがあれば、なるべく早く専門医を受診して下さい。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/05/10
- No.221 パートナーの暴力から逃れたい
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「些細なことで、夫が手を上げるようになりました。何とかやめさせたいのですが。」こんな相談を受けました。 夫や恋人が女性に暴力をふるう、いわゆるドメスティック・バイオレンス(DV)は、いまや深刻な社会問題。解決するためにはその原因を理解する必要があります。 一つは暴力に飲酒が絡むケース。アルコール依存症に陥るとまず自力での問題解決は望めません。専門医に対処法を相談するのがベストです。次にパートナーの心の病気が疑われるケース。うつ病や情緒不安定性人格障害、妄想性障害が原因となる場合は、夫の肉親に説得してもらうなど、周知の力も借りて専門医への受診につなげて下さい。 「ご自身のケアを」そして、もう一つ重要なのが奥さんご自身の心の問題が絡んでいるケース。育児や家事に疲れ果て、知らぬ間に軽いうつ病を患っている場合があります。その倦怠感に夫は苛立ち、ないがしろにされていると誤解して暴力をふるうケースがそれです。もし、その暴力から逃れようとせず、されるがままに拒絶することもできないようなら、今すぐ専門医を受診することです。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 07/04/05