こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。
こころの健康アラカルト No.761~770
- No.770 高いところに行くと冷や汗が・・・
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「高所恐怖症」についてお話ししましょう。 年齢・性別などに関係なく、ある日突然発症します。高所が極度に苦手で、そのような状況下に置かれると頭の中が真っ白になったり、動悸やめまい、冷や汗や気持ち悪さなどの症状を訴えます。“閉所恐怖症”も対象が違うだけで、同じような症状が見られます。
克服は可能でしょうか。こわい、“ドキドキする”くらいの軽い場合は慣れることもありますが、恐怖症状が出ている場合はきちんとした治療が必要です。 多くの人は投薬と行動療法で症状自体は数カ月で改善され、完治に4~5年ほどかかります。放置すると難治になったり、気分が落ち込むなどのうつ症状が出ることも。専門医に相談して早めに治療しましょう 。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/06/25
- No.769 手や体の汚れが気になって仕方がない・・・
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子どもの潔癖症についてお話ししましょう。 症状と発症の理由は、潔癖症は“不潔恐怖”とも言われ、手の汚れが気になって何度も手洗いをする、体を不潔に感じて、一日に何度も入浴する、汚れが気になってかばんなどを床に置けない、などの強迫行為が見られます。子どもの場合は、行動モデルとなる親や家族のこだわりや強迫因子が強いほど発症しやすいと言われます。
家族はそれらの行動を注意してもよいのでしょうか。注意して改善できる程度であれば問題ありませんが、病的な執着心で行っている場合は一旦注意を止めて専門医に相談しましょう。治療の進み具合に合わせて適切な注意を促すことが有効です。また、従来からある家庭内のこだわりなどを極端に変えてしまうと“家での居場所がない・・・”と感じてしまうので気をつけてください。
治療方法は、投薬と認知行動療法で行います。強迫観念を消し去るのは難しいですが、強迫行為は改善されます。手洗いや入浴時間などが軽減すれば、それらに費やしていた無駄な時間が減り、行動の幅が広がるので、生活の質が改善されます。学生のうちなら、高い確率で改善が期待できます。早期治療のためにも、お子さんの異常に気付いたらまずは専門医へ。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/06/18
- No.768 家庭内の子どもの粗暴が悩み
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「家庭内で、子どもの粗暴に悩んでいます(中学1年生)。」こんな質問を受けましたが、心の病気と関係があるのでしょうか。 思春期は、身体や脳が子どもから大人へと成長する時期。そのため精神的に不安定で、衝動的な行動が止められないこともあります。 反抗期のため、親との衝突もあります。これ自体は自然なこと。しかし、暴力を振るうようであれば注意が必要です。
男性の場合、男性ホルモンが大量に分泌される年頃であり、いわゆるキレやすくなります。外出や部屋に閉じこもるなど、親との衝突を避ける行動もよくあること。この場合、親が子どもを追い込みすぎてはいけません。そうすると暴力へ発展するケースがあります。 女性も、生理など身体の変化があり不安定な時期。イライラから親との衝突もよく見られます。そのため、部屋に逃げ込むこともあり、これは、正常な判断と言えます。しかし、自分の意志が通らない場合など、イライラのエスカレートには気をつけなければなりません。
心の病気との関係では、男性は統合失調症など、女性では統合失調症の他、境界性パーソナリティ障害などが疑われます。統合失調症は、気づきにくいことが多く、親が相談されるケースも。ご質問の状況では、親子ともに問題を抱え込まず、専門医に相談することで何らかの解決策が見つかることも期待できます 。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/06/18
- No.767 眠りが浅く、疲れがとれない
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眠りが浅く、疲れがとれません。これは心が関係しているのでしょうか? これは「熟眠障害」と一般的に言われています。夢の内容をしっかり覚えている、または夜に何回も目を覚ましてしまうなどの症状があり、起きても身体がだるかったり、疲れがとれないのが特徴です。 熟眠障害は、主に生殖能力のある若い女性と高齢者に多く見られます。若い女性は、子どもを育てるという本能から、眠りが浅い傾向があります。高齢者は、加齢に従って眠りの深度が浅くなるもので、いずれも自然なことです。
問題となるのは、いわゆる睡眠時無呼吸症候群がその一つで、その原因には、慢性閉塞性呼吸器疾患や肥満体質、骨格の問題、アルコール摂取などでも、眠りが浅くなり熟眠障害が起こるとされています。 以上の要因と、稀にある原因不明の突発性のものを除いては、その多くが心の病気に関係していると考えられます。例えば、うつ病では、朝早く目覚める、眠りが浅いなどの症状が見られます。また、そううつ病や統合失調症、パニック障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などでも熟眠障害が見られます。
睡眠導入剤での対処もありますが、これは根本的な治療になりません。背景をしっかり確認することが大切。専門医への相談が望まれます 。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/06/07
- No.766 嫉妬妄想
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「タバコを買いに行ったなんて嘘。夫は女に会っているに違いない。」“証拠”となる手紙や領収書が出てきたわけでもなく、なぜか強く信じ込んでいる場合、いくつかの原因が考えられます。
(1)レビー小体病。認知症の一種で、初期症状は妄想やうつ病のみのことが多い。家事は普通にできます。
(2)妄想性障害。通常は若いころから妄想がありますが、遅い発症かも。
(3)憂鬱感・興味や喜びの消失があるなら、うつ病。自己評価の低下に加え、加齢で女性としての自信喪失から、パートナーの浮気を疑うことも。
(4)飲酒癖があるならアルコール依存症。
(5)若い頃から被害妄想や精神科受診歴があるなら、統合失調症。年を取り家事で手一杯になった場合などに見られます。
他にはガンの脳への転移や甲状腺異常等。専門医で検査しましょう。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/06/11
- No.765 視線や会話がとても気になる
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周りの人の視線や会話がとても気になります。自意識過剰なのでしょうか。」こんな質問を受けました。 例えば、電車に乗っていて、周りの視線がとても気になったり、会社で自分のことを悪く言われているのではないかと考えてしまう症状は、主に「社交性不安障害」や「うつ病」「統合失調症」などでみられます。
「社交性不安障害」は、いわゆる「対人恐怖」なども含む病気と考えられています。人前で話をしたり、人前で電話をすることにも過度に緊張してしまう。また、趣味のサークルやPTAの集まり、レストランや居酒屋での飲食、さらには人のいる部屋に入ることや、目を合わせることも苦痛となり、強い緊張が伴う場合もあります。 こうなると、その過度の緊張を避けるため、活動範囲が求められ、日常生活に支障をきたしてしまいます。
不安や幻覚、被害妄想などに見舞われる「統合失調症」では、自分が周りから何か悪く思われているのではないかという症状が、単独でみられることもあります。「うつ病」では、気持ちの落ち込みや不眠症などとともに、視線恐怖等がみられるケースもあります。 以上のように、人の視線や会話が気になってしまう状態が苦痛で、また他の症状も出ているようであれば、専門医への早期の相談が望まれます。相談することで、症状が改善し、生活の質も向上すると考えられます 。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/06/04
- No.764 そろそろ人間関係に疲れていませんか?
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春から始めたPTAの役員やパート勤務などで、新たな人間関係に悩んでいるお母さんも多いのでは。2カ月が過ぎ、そろそろ疲れが出てくるころです。久々の社会復帰や周りの人となじめない・・・などの悩みから心の病につながることもありあます。
どんな心の病が心配されるか、その症状はといえば、過呼吸、下痢、便秘、手の震え、頭痛、入眠障害などの症状が見られる「不安症候群」や、つまらない、食欲がない、疲れやすいなどの症状が出る「うつ病」などが心配されます。 これらの症状が1つ、2つと続いて表れる場合、心の病にかかっているサインかも知れません。
かかりやすい人は、心配性や責任感の強い人、頑張りすぎてしまう人などに多く見られる傾向にありますが、性格がそのまま病気に直結するわけではありません。 予防法はあるかといえば、早めに疲れを自覚すること、一人で抱え込まないことです。また、コミュニケーションも大切です。賢く立ち回れるなら、「子育てや家事が大変でこれ以上は無理・・・」「体力がない・・・」など自分のキャパシティーを把握して周囲の人に伝えることも有効でしょう。気持ち以上に体は正直なものです。普段は見られない症状が表れたときは、早めに専門医に相談してください 。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/06/04
- No.763 電車や人ごみで突然の発作?
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No.761に続いて「不安障害」についてお話します。
最終回は「パニック障害」についてです。電車、高速道路、レジの列、デパートの人ごみなど、逃げ出せない状況に置かれると、息苦しさや動悸、めまい、震えなどを感じ、“このまま死んでしまうのかも”という激しい恐怖感に襲われるのが“パニック障害”。ある日突然発症します。
どんな人に起こりやすいのかと言えば、責任感が強く社交的で、自分の気持ちより相手の気持ちを優先させ、細やかで協調性がある人、いわゆるリーダータイプの人が発症する傾向にあります。 症状が進むと、落ち込んだ状態が続き、うつ病になることも。初期の段階での専門医への相談をお勧めします 。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/05/28
- No.762 些細なことにもイライラ
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「些細なことにイライラしています。頭では分かっていても気持ちのコントロールが難しい。これは、心の病気と関係があるのでしょうか。」こんな質問がありました。 多忙や過労など、精神的に追い詰められている状況では、質問のように怒りっぽくなることがあります。このように原因が明確であれば、心の病気の可能性は低いといえます。 一方、理由が分からずイライラする症状が2,3週続いているようであれば、心の病気のサインかもしれません。
その場合、疑われるの心の病気として、「全般性不安障害」があります。漠然とした不安があり、その不安がつのってイライラしてしまうと考えられます。体には肩こりや頭痛、目まい、頻尿、口の渇き、耳鳴り、食欲低下、疲れやすいなどの症状が見られます。 その他にも「うつ病」の可能性もあります。自分がダメな人間だと思ってしまうなど気分が落ち込み、心が苦しい状態となっているので、例えば子どもからの些細な要求に対しても、怒りっぽくなるのです。
また、「統合性失調症」や「境界性パーソナリティ障害」「そううつ病」など様々な可能性があります。 いずれにしても、イライラの背景をはっきりさせることで、余裕のある生活につながると思います。専門医への相談をお勧めします 。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/05/27
- No.761 人の目が気になってしょうがない
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No.759に続いて「不安障害」についてお話します。 人前で食事をする、文字を書く、歌を歌う・・・といった人の目を意識する場面で、手が震える、顔が真っ赤になる、冷や汗が出る・・・といった症状がある場合、不安障害のひとつである“社交性不安障害”が考えられます。
そのほか特徴的な症状は、一度失敗した経験があると、同じような場面を避けるようになったり、同じ状況が近づくと顔が真っ赤になるなど予期不安が現れます。また、思春期から成人早期に発症することが多いのも特徴です。 治療法は、薬物療法と行動療法があります。より速い時期に治療をスタートすれば完治しやすいのですが、子どものころ発症して大人になるまでそのままにしてしまっていると、治療に時間がかかる場合もあります。
早い段階の治療で効果的なことは、それまで引っ込み思案だった子どもが積極的になり学級委員を務めるなど、性格に大きな変化が現れる例があります。 子どもに関しては、親が気付いてあげることが大切ですね。
子どもからのサインに注意を払うことはもちろん、ご両親のうちどちらかが発症した経験がある場合は、特に気をつけてあげてください。ハートクリニック院長 浅井逸郎 11/05/24