こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。

こころの健康アラカルト No.991~1000

No.1000 夜なかなか寝付けない

「夜なかなか寝付けません。どうしたら眠りを改善できますか?」41歳・男性からの相談です。 ご相談者は2年ほど前から寝付きが悪くなりました。最近は布団に入っても眠ることができず、テレビをつけっぱなしにしてソファーで横になっていると、明け方ようやく眠れるとおっしゃいます。そのため疲れもとれず、仕事中も集中力がないそうです。 お話しを聞く限り、睡眠障害の可能性があり心配です。まずは脳を眠りに入りやすい状態にするため、生活環境をもう一度見直してみましょう。 通常脳の「クールダウン」には3~4時間必要だと言われます。仮に12時に帰宅すれば、自然と眠れるのは明け方になってしまいます。仕事を早く切り上げるなどの努力が必要ですし、眠る前にパソコンやスマートホンをいじったりしても脳が眠る状態になりません。 また習熟度とマッチしない仕事を与えられていたり、苦手な人とチームを組んでいるなど職場環境に変化があり、適応に時間がかかっているとも考えられます。
生活習慣や周囲の環境を変えても眠りに改善が見られなければ、うつ病や不安障害、統合失調症、双極性障害など心の病気が関係している可能性があります。精神科や心療内科など専門家にご相談下されば、カウンセリングや睡眠導入剤の服用などによって眠りの改善を図っていきます。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/11/02

No.999 物が捨てられない

物が捨てられず、ゴミ屋敷化・・・。 背景に心の病が隠れているかもしれません。 注意が必要な場合は、“捨てられない”という行為が単に性格的なものか、病気の症状としての“ため込み”なのか見分けるのは難しくありません。 生ゴミなどにも執着し、ほかの人が捨てようとすると非常にヒステリックに怒り始めたり、表情も変わるようなら注意が必要です。放置すると、生活できないほどゴミ屋敷化することも。
原因となる疾患は、強迫性障害の非常に難治なもの、または統合失調症のある群でも、妄想に基づいてゴミをため込む症状が見られます。 治療は薬物療法で症状を鎮静化して、ゴミを取り除き、生活環境を正常化することから始めます。 この記事はNo.1001に続きます。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/10/26

No.998 何度も車の事故を起こしてしまう

「仕事中に車の事故を繰り返してしまいます。自分では気を付けているつもりなのに、どうして事故を起こしてしまうのか、悩んでいます。」27歳・男性からの相談です。 ご相談者は2年前に現在の会社に就職しました。日中は車で得意先を回っていますが、この2年間で5回の事故を起こしてしまったそうです。 内容が電柱や標識、駐車中の車にぶつける、などいずれも注意を払えば防げるものであり、会社からは「次に事故を起こしたら思い処分をする」と言われているそうです。
こうした状態には様々な原因が考えられます。例えば怪我をしたり風邪を引いても注意が散漫になりますし、夫婦喧嘩や借金、家族の病気と言った心配事があるために、「上の空」となっているのかもしれません。もし病気や怪我、心配事があるようなら、会社と相談して勤務形態を変えるなどしてもよいでしょう。
また心の病気が関係していることも想定できます。 女性に多い症状ですが、ADHD(発達障害・注意欠陥・多動性障害)の不注意優勢型、双極性障害、不安障害、統合失調症の方も、集中力が低下する傾向があります。 こうした色々な原因を見極めて、それでも不安があれば精神科や心療内科に相談するのもよいでしょう。カウンセリングなどを通じて、状況を改善できるかもしれません。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/10/26

No.997 「非定型うつ病」「新型うつ病」とは?(2)

この記事は、No.993からの続きです。 若い人に多いという「非定型うつ病(以下非定型)」「新型うつ病(以下新型)」についてのお話しの2回目です。 非定型と新型は同じものと考えられるのでしょうか? 同じような意味で使われる場合もありますが、新型についてはまだ医学的に公式には認知されていません。若い人の抑うつ状態を指すことが多いので、「現代型うつ病」といわれることもあります。
新型うつ病の特徴はというと、典型的なうつ病は「自分が悪い。生きている価値がない」などという自責感が強いのに対して、新型は「自分には責任がなく、周りが悪い」という他罰的な傾向を持った人が多いです。また、典型的なうつ病では何かあっても元気が出ないのに対して、新型では楽しいことなど状況により気分が明るくなります。非定型の世代とも重なり、診断が難しいです。 診断の難しい点とは、新型うつ病と診断されても、インターネット依存症やギャンブル依存症、双極性障害などではないかと思われる方が多く含まれているように思います。また若年期の未熟で他罰的な時期に、うつ病にかかった場合も同様の反応が見られることがあります。そのため、新型の存在そのものの議論も今後なされる必要があるかもしれません。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/10/21

No.996 婚約者が経歴を偽っていた

「婚約者から経歴を偽っていたことを告白されました。それ以降、両親が結婚に反対するようになり、悩んでいます。」29歳・女性からの相談です。 ご相談者は3年間の交際を経て婚約しましたが、最近になって婚約者から国立大学だと言っていた出身大学が、実は地元の私立大学だったと告白されました。ご両親は、こういう人は、今後もうそをつくに決まっている。別れた方がいいと結婚に反対するようになり、ご相談者自身も彼に対して疑心暗鬼になっている、とおっしゃいます。
まずどうして経歴を偽っていたのか、どの程度の嘘なのかをよく検討することが必要です。婚約者がその場の空気を大事にし、相手を傷つけない思いやりのある人で、会話のなかでの勘違いを訂正できなかったのかもしれません。交際の前に自分を良く見せようとつい言ってしまったうそかもしれません。こうしたケースならば、愛情さえあれば十分乗り越えていけると思います。
ただ日常的にうそが散見され人は心の病気の可能性もあります。自分の中にいくつもの人格が現れる解離性障害や、ギャンブルやアルコールに依存する人はその行動を隠すことが常態化しているため、うそをつくことに抵抗のない人がいます。 まずはうその原因や経緯について、改めて二人でよく話し合ってください。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/10/19

No.995 婚活が上手くいかず悩んでいる

「最近婚活を始めましたが、うまくいかず落ち込んだ気分になっています。」39歳・男性からの相談です。 2年ほど前に婚活サイトに登録したというご相談者。これまでに何人かの女性とコンタクトをとりましたが、自分がいいと思った人にはことごとく交際を断られ「自分は人から選んでもらう資格がないのでは」と落ち込んだ気分になっている、とおっしゃいます。 未婚率が高まり、多くの人が「婚活」に取り組んでいますが、うまくいかずに途中で止めてしまったり、場合によっては心身の不調に発展する人もいます。
未婚率が高くなっている背景には、価値観が多様化した現代社会特有の事情があります。働き方ひとつとっても、正社員以外に専門職の契約社員もいれば転職を繰り返してスキルアップを目指す人もいます。そういった意味で「マッチング」の可能性はどんどん下がっていると言えるでしょう。ご相談者も自らの許容の範囲を広げないままに「合う人がいない」と考えてはいないでしょうか。 またご相談者自身が婚活を成長の場と捉え、自分の「レベル」をあげる努力を続けることが大事です。自分が選ばれなかった理由をもう一度見つめ直し、話し方や趣味、人生への取り組み方を意識的に変えてみましょう。こうした努力を続ければきっと生涯の伴侶に巡り合えると思いますよ。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/10/12

No.994 休日になると体調が悪い

働き盛りの男性から休日になると体調を崩し、発熱・頭痛・下痢などで悩んでいるとの相談を受けました。 まず内科を受診して肝臓など身体の不調がないか確認しましょう。仕事が休みの日に限って調子が悪くなるため、家族からは仕事中毒と揶揄されるようですが、実は自律神経が不調をきたし治療すべき状態かもしれません。詳しく話を聞く必要がありますが、職場に対する不適応や家庭内の問題が原因で適応障害を起こしている可能性もあります。またうつ病や不安障害が顕在化する前の状態化もしれません。 職場の対人関係や仕事量・残業時間などが本人の能力・資質にあっているか、家族・親族に問題はないか、また、睡眠時間や身体的状況など細かい聞き取りが、診断と治療に欠かせません。早目の受診をお勧めします。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/10/08

No.993 「非定型うつ病」「新型うつ病」とは?(1)

若い人に多いという「非定型うつ病」「新型うつ病」について、2回にわたりお話ししましょう。 非定型うつ病とは、気分の落ち込み、意欲・集中力の低下などうつ病の主な症状があり、状況によって反応性が異なるのが特徴です。 典型的なうつ病には食欲の低下や不眠(早朝覚醒・熟眠障害・中途覚醒など)がみられますが、非定型うつ病は落ち込むと過度に食べてしまう過食や、いくら寝ても眠くなる過眠の傾向があります。さらに身体が鉛のように重く、一日中動けなかったり、対人関係に過敏になり、ちょっとした他人の批判を過剰に受け止めて落ち込んでしまうようなことも。また、うつ病は終始落ち込んだり、意欲がわかないことが多いですが、非定型うつ病では状況によって気分が変わります。例えば仕事には行けないのに遊びには行けるなど、周囲から「なまけている」と誤解されやすい病気でもあります。 治療法は、非定型うつ病のための抗うつ剤も徐々に増えてきましたが、薬物療法が十分に確立されておらず、典型的なうつ病よりも改善に乏しいことが多いです。 気になる場合は、早めに医師に相談をしてください。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/10/05

No.992 夫が家で怒鳴るようになった

「夫がささいなきっかけで怒鳴ったり、物を投げつけたりするようになりました。どのように向き合ったらよいでしょうか。」49歳・女性からの相談です。 ご相談者によれば、ご主人が怒鳴ったりするようになったのは、最近、職場で技術職から営業職に配置転換されてから、とのこと。「新しい職場になじめずにストレスが溜まっているのでは」とおっしゃいます。
技術職と営業職では必要とされるスキルや考え方がかなり異なるうえ、キャリアを重ねた人が新しい職場になじむのは大変です。 ご主人のケースも適応障害のほか、背景にうつ病や双極性障害、妄想性障害、更年期障害などが潜んでいる可能性が考えられます。 こうした症状が出ると仕事の能率が低下し、ますます新しい環境への適応が難しくなります。あまり放置せずに、まずは心療科などを受診することをお勧めします。 もし病気だと診断されれば、適応障害の場合はカウンセリング、うつ病や妄想性障害の場合は認知行動療法、双極性障害の場合は社会リズム対人関係療法等を、必要に応じてお薬による治療と併せて実施します。
このようにどういった原因で自分をコントロール出来なくなっているのかで、対処法も全く異なります。 もしご本人がためらっている場合は、奥様おひとりでも結構です。早目に専門家にご相談下さい。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/10/05

No.991 息子(5歳)が激しく夜泣きする

「5歳になる息子がひどく夜泣きするので心配です。どう対処したらよいでしょうか?」35歳・女性からの相談です。 ご相談者の息子さんは、2~3歳頃にもよく夜泣きをしていましたが、最近、再び夜泣きをするようになりました。しかも大きな声で泣いたり叫んだり、暴れて壁を蹴ったりすることが夜中に何度も続くため、「何か不安やストレスがあるのではと心配」とおっしゃいます。
まず原因としては5歳児特有の事情があると思います。この年頃のお母さんは周囲と社会的なつながりを持つようになり、発達の新たな段階に入ります。そのため友達とケンカをした日などは、その興奮や嫌な感情といった情報を処理しきれずに夜泣きにつながっている可能性があります。
元気に正常な発達を辿っているのだと考えられますから、あまり心配する必要はないでしょう。 ただしあまりにながく夜泣きが続く場合は、保育園や幼稚園になじむのに時間がかかっている可能性もあります。ケンカをしたり孤立していないか、先生に普段の様子を尋ねてみた上で対処して下さい。 また普段からふさぎこんだり不機嫌にしている場合は、実際に身体の不調が考えられます。小児科などで診てもらいましょう。 それでもご心配な点があれば、一度、心療科や精神科にご相談下さい。

ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/09/28