こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。
こころの健康アラカルト No.1001~1010
- No.1010 うつ病で休職中の父に納得できない子ども
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あるお母さんから「うつ病で夫が休職中。そのせいか思春期の子どもの気分も沈みがち。どうしたら?」との相談を受けました。
子どもは今まで父親に教わってきたことと、働かずにいる父の姿のギャップを感じています。母親がどんなに説明しても到底納得できず、そんな自分の気持ちをどう表現したら良いのかもわからずにいるのです。この場合、子ども自身が父親の担当医師からきちんと説明を受けるとよいでしょう。父親への対応もアドバイスしてもらいましょう。1回では無理でも何回か説明するうち、小学校も高学年以上なら、そのうち父親の現状を納得できるようになります。
それでも沈みがちな場合は、遺伝性のうつ病や双極性障害の場合も少なくありません。お子さんも医師に診察してもらうことをお勧めします。ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/12/06
- No.1009 スマホを1日中手放さない娘
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「中学1年生の娘にスマートフォンを買い与えたところ、1日中いじっています。成績も下がってきていて心配です。」43歳・男性からの相談です。 パソコン並みの機能を持つスマートフォンの普及で、ゲームやSNSに依存する人が増えています。ご相談者のお嬢さんもゲームに夢中になっており「最近は睡眠時間が短くなり、情緒も不安定になっているように感じる」と言います。
ネットゲームには目に見える成果があり、刺激や達成感もあります。しかし続けているとだんだん「慣れ」が生じていきます。すると以前と同じような満足度を得るためには、より難しいミッションのクリアが必要になり、ゲームに費やす時間や頻度が多くなっていきます。これがひどくなり日常生活にも影響が出るようになると依存状態です。
まずはゲームに費やす時間を少しずつ短くする努力が必要です。その際、頭ごなしに叱ってやらせないのではなく「食事中や寝る前の1時間、朝起きてすぐはやらない」などのルールを作りましょう。空いた時間はテレビを見たり、漫画を読んだりしても構いません。生活のなかにゲーム以外の活動を取り入れるようにすると、だんだんTPOに応じた遊び方ができるようになっていきます。 こうした取り組みをしてもゲームをすることに制限がかからないようならば、専門家にご相談下さい。ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/12/07
- No.1008 嫉妬心を抑えられない
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「嫉妬心や猜疑心が強く苦しいです。こうした気持ちを抑える方法はありますか?」30歳・女性からの相談です。 ご相談者には交際を始めて2年になる男性がいますが、会っていない間どこに行き誰と合っているのか気になって仕方がなく、自分の知らない人と話しているだけで不安な気持ちになるそうです。また決まった時間に電話やメールがないと怒ってしまうこともあり、「このままでは嫌われてしまうのでは」と言います。 好きな異性に対して嫉妬や不安な気持ちを抱くことは正常な心の働きです。ただ愛情ゆえの行動であっても、疑われることは気分の良いものではありませんから、過度な嫉妬はお二人の関係にとって決して良いものとは言えません。
こうした嫉妬や猜疑心の背景には、統合失調症など心の病気が潜んでいる可能性もあります。しかしご相談者の場合は嫉妬することが、「賢明ではない」と感じていますから、その心配は少ないと思います。
彼の心を離したくないのならば、監視に力を使うのではなく、自分の魅力を高める努力をすることが、「正攻法」だと言えるでしょう。 服装のセンスを磨いたり教養を高める努力をしてみてはいかがでしょうか。また生活の中心が、彼との時間になってしまうと不安が大きくなります。趣味など何かに打ち込む時間を持つと良いと思います。ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/11/30
- No.1007 境界性パーソナリティ障害とは? (2)
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この記事はこちらからの続きです。 感情・行動・対人関係が不安定な「境界性パーソナリティ障害」についての2回目です。 この病気の特性は、“自己同一性障害”があるため自分というものがつかみにくく、感情や行動などが不安定になります。また非定型うつ病、パニック障害、全般性不安障害のほか、摂食障害、アルコール依存症などの合併症を併発することが多いです。 中学・高校生ごろ発症し、25歳ごろがピークになります。その後、30代半ばから40代半ばにかけて始まっていきます。環境調整や認知行動療法、力動的心理療法などを行いながら、合併症も治療していきます。
ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/11/30
- No.1006 うつ病から復職できるか不安
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「うつ病と診断され、4カ月前から休職しています。『来月から復職してみては』と言われていますが、また病気になるのではと不安です。」27歳・女性からの相談です。 ご相談者は意欲や集中力の低下などの症状があり、うつ病と診断され、現在休職中です。最近は状態が安定してきたこともあって復職を検討していますが、その日が近づくにつれて不安が強くなっているとおっしゃいます。
仕事が原因で病気になった場合、復職が不安なのはごく自然な心の働きです。どうすれば再発しないかを知っておくと不安も軽くなると思います。 まず症状が完全なくなっていることが望ましいということです。うつ病になると憂うつな気持ちが続くほか動悸やめまい、ひどい頭痛など自律神経症状が現れます。こうした症状がすっかりなくなっているのが理想です。
また今の自分がどれくらいの仕事をこなせるかを把握することも大切です。例えば電車で会社の近くに行ってみるなどして通勤に耐えられるかを試したり、図書館に行って一定時間の作業をこなす、などしてみましょう。復職すると遅れを取り戻そうとして頑張りすぎてしまう人がいますが、あせりは禁物です。自分ができる仕事量を把握し管理者にも伝えておくと、再発のリスクをかなり減らせることができると思います。ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/11/25
- No.1005 境界性パーソナリティ障害とは? (1)
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感情・行動・対人関係が不安定・・・。若い女性に多い「境界性パーソナリティ障害」について2回にわたってお話ししましょう。 どのような病かというと、境界性人格障害とも言われていますが、否定的な意味合いが付けくわえられていると考えられ、現在は境界性パーソナリティ障害と呼ばれることが多くなりました。 調子のよい時は普通に生活できますが、具合が悪い時に特徴的な行動パターンが出現しやすくなります。また、合併症も多くみられます。
特徴的な行動パターンとは、自分の手を切るなどの自傷行為、大量の服薬、「死にたい」と言って実際にベランダから飛び降りるなどの自殺未遂をすることもあります。また、対人関係が不安定で、トラブルが比較的多い人もいます。
そのほかの症状は、物理的に胸に風穴があいたような空虚感を感じます。ないものが見える幻視、物が実物より大きく見えたり小さく見える視覚変容などあたかも脳障害があるのではないかと思われる視覚異常のほか、ドアが閉まる音や機械音などの幻聴があらわれる場合もあります。さまざまな症状があり、程度にも差があります。 この記事はこちらに続きます。ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/11/16
- No.1004 仕事でミスを繰り返してしまう
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「最近転職したのですが、職場で同じようなミスを繰り返してしまい悩んでいます。改善する方法はありますか?」27歳・女性からの相談です。 7月から現在の会社で働いているというご相談者。同じ業界からの転職で仕事内容は大きく変わらないのに、電話対応やメール・社内文章の「てにおは」の間違い、企画書の数字が異なっているなど基本的なミスが重なっているそうです。 「最近は同僚からも冷ややかな目で見られている気がする。何とか改善したい」とおっしゃっています。 まずはミスを繰り返さないために、仕事のやり方を見直すことが必要です。例えばメールや社内文章は、あまり確認せずに送ってはいないでしょうか。文章で伝えようとすれば推敲は欠かせません。自分なりの業務のフォーマットを作り、ポイントを設けて常にチェックすればミスも減っていくはずです。
また数字の入力ミスは、慎重に作業するのはもちろんですが、数字の意味(営業目標や取引額など)が頭に入っていれば、間違った時に自然と気づくはずです。業務を全体で捉える努力と視点が必要です。 それでもミスを多発する場合には、うつ病や不安障害などによる集中力の低下、発達障害や注意欠陥障害などの心の病気が関係しているケースも考えられます。一度精神科や心療内科にご相談ください。ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/11/16
- No.1003 振る舞いが乱暴な娘が心配
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「3歳の娘は言葉使いが汚く、物を投げたり私に噛みついてきたり、3歳上の兄を殴ることもあります。何か精神的に問題を抱えているのでは、と心配です。」35歳・女性からの相談です。 ご相談者の娘さんは、家では暴れたりする反面、保育園では言うことを聞く「良い子」のため、先生に相談しても「信じられない」と言われるそうです。そうした「二面性」も気になる、とおっしゃいます。
この年頃のお子さんは、自我の芽生えとともに「第一反抗期」に入ります。お嬢さんもこの時期だと考えられますから経過とともに落ち着いてくるようなら、全く問題ないと思います。乱暴な言葉使いは親としては驚きますが、テレビやご両親が普段何気なく使っている言葉をまねているだけかもしれません。何が「良い言葉か」を一つずつ教えてあげて下さい。 またお兄さんと比較して過剰な達成度を要求してしまい、混乱して暴れているのかもしれません。本人の訴えに耳を傾けて、理解できるまで伝えましょう。
ただ、けいれんや吐くようなことが頻発するようであれば、身体の調子が悪い可能性も考えられます。小児科の先生に診てもらって下さい。目線が合わない、異常にこだわりが強いなどの症状があれば、発達障害が疑われる場合もあります。心配な場合は精神科や心療内科でご相談下さい。ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/11/09
- No.1002 身だしなみに関心がなくなった
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以前はオシャレだったのに急に化粧や着替えが面倒になり、外出する気さえ起らなくなることがあります。 何らかの生活環境の変化にうまく対抗できない、適応障害が考えられます。もしくはいわゆる空の巣症候群で子どもの自立とともに生き甲斐を失い、空虚感でいっぱいになっているのかもしれません。気分の落ち込みが長く続くと、うつ病を発症する恐れがあります。
初老以降なら認知症の可能性もあり、周囲への関心が薄れるという前駆症状が出ているのかもしれません。意識的に習い事や同窓会へ出かけたりすると治る場合もありますが、もし2週間以上状況が同じなら早めに心療内科へご相談ください。
症状は人により様々なので、素人判断は危険です。まれに甲状腺機能低下症など内分泌系の病気が隠れているケースもあります。ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/11/01
- No.1001 「物を片付けられない」原因は?
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この記事はNo.999からの続きです。 「いつも物が散らかってしまう」「物を片付けられない」という人も多いのでは。 前回はゴミをため込むケースを話しましたが、過度に片付けができない場合も、背景に心の病があるかもしれません。 心の病がある場合とはどんな場合でしょうか。片付けることにはエネルギーが必要です。また、「料理や洗濯は好きなのに片付けは苦手」という人もいます。うつ病や不安障害、適応障害、双極性障害、統合失調症などの抑うつ状態では苦手なことが強調されるため、普段はできていた片付けができなくなることが多く見られます。
そのほかに原因として考えられるのは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の不注意優勢型(ADD)の場合も考えられます。片付けをしているうちにほかのことに気を取られて、物が山積みされているのに放置してしまいます。
どちらが原因であるか見分けるポイントは、気分の落ち込みや、体にはほかの症状がなく、不注意によるミスが目立つ場合はADDの可能性が高くなります。また、ADHDだけでなく、二次障害としてうつ病を合併している人もいます。背景疾患によって対応や治療法も異なるため、気になる場合は早めに相談をしてください。ハートクリニック院長 浅井逸郎 13/11/02